■テレビシリーズでも怖い『クレしん』の劇場版ホラー作
続いては、映画『クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶ 踊れ! アミーゴ!』。テレビシリーズでも「カスカベ都市伝説シリーズ」など年に数回ホラーエピソードが挟まれる『クレしん』。2006年に公開された同作は、メインビジュアルからは全く予想がつかないが、ファンの間では『クレしん』映画の中で最もホラーな作品だと言われている。
内容は、カスカベに住む人間が「コンニャクローン」というクローン人間に襲われて姿を消し、その人間の代わりにクローン人間が入れ替わり、いつの間にか町中がクローン人間だらけになっているというもの。
特に怖かったのは、事態を信じない風間くんが自宅でニセモノの母親と邂逅するシーンだ。
風間くんからは後ろ姿で見えないが、このときの母親は口が大きく裂け、牙が生え、舌の先が割れた山姥のような顔に変貌し、鶏肉を丸呑みにしていた。下手なホラー映画よりもホラーである。
また「コンニャクローン」たちは痛みを感じないので、ニセモノのみさえの腕がありえない方向にグネグネと曲がったり、ひろしの同僚の川口は頭に定規がささっても無反応で、それをさらに押し込んだりと見ているだけで痛そうなシーンも多い。
さらに、山道を通って脱出を図る野原一家らがヨシりんとミッチーに襲われた際、ニセモノのミッチーの顔は殴っても殴ってもおどろおどろしい怪物に顔の形を変えていくばかりで全く倒せないというシーンも絶望感を煽った。
派手なシーンも多いが、同作では、身近な人が別の存在に成り代わるという子ども向けではあまり見られないようなじっとりとした恐怖が描かれた。
最後は日本で2010年に公開されたアニメ映画の『コララインとボタンの魔女』。両親が多忙であまり構ってもらえないため退屈を感じている少女・コララインが主人公で、壁に封印された小さなドアからどんな願いも叶う夢の世界へ出入りする話だ。
コララインが出会った夢の世界には、優しい「別の」父母がいた。本当ならできないはずなのに母は料理をし、父はピアノを弾いてコララインにかまってくれる。
しかしその世界の住人は皆、目がボタンになっているのだ。優しげな母の顔もボタン目なのでどこか無機質な不気味さを感じる。
さらにこの世界で暮らすには、コララインも目をボタンにしなければならないという。作中にはコラライン同様、夢の世界に魅せられて目をボタンにした=命を食べられてしまった子どもも登場する。
どことなくダークで異様な雰囲気を感じるのは、監督が『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』で知られるヘンリー・セリック監督だからだろう。しかしこの映画には、子どもたちに対しても親に対してもきちんと教訓があり、親子で見るのもいいかもしれない。
油断していたら大人の方がびっくりしてしまうかもしれない子ども向け映画の数々。一緒に鑑賞してみるのもまた一興だろう。