「醒めない夢を見ているだけさ」『カウボーイビバップ』放送25年の豪華声優陣をプレイバック!の画像
映画『カウボーイビバップ 天国の扉』DVDパッケージより ©サンライズ・ボンズ・バンダイビジュアル
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1998年にサンライズが制作、全26話が放送されて、そのハードボイルドな世界観にまたたく間に人気を得た伝説的SFアニメ『カウボーイビバップ』。その地上波放送開始から25年となる今年、伝説を彩った声優陣にスポットを当てて、魅力を振り返りたい。

 

■山寺宏一、石塚運昇、林原めぐみetc…が演じるオリジナルSF

 本作の主人公は賞金稼ぎ、スパイク・スピーゲル。もじゃもじゃ頭でジークンドーの使い手、危険とハプニングを愛する減らず口の男だが、その腕は抜群。まさにカッコいいオトナの男だった。声を演じていたのは、山寺宏一。本作で地上波TVアニメの主人公を初めて演じた山寺は、スパイクが以後の代表作の一つとなった。
 一方でスパイクの相棒、ジェット・ブラックを演じるのは石塚運昇。『マクロスプラス』や数々の洋画吹き替えでその実力を知られていた石塚は、36歳ながら風格を兼ね備えた、オンボロの宇宙船・ビバップ号の船長を好演。とくにジェットの過去に迫ったSession #10「ガニメデ慕情」は泣かされるばかりだった。
 さらにヒロイン、フェイ・ヴァレンタイン役に林原めぐみ。享楽的な性格で、スパイクとジェットを振り回す元詐欺師の賞金首。彼女の独自の甘さとドライさの緩急は、今観てもシビれるばかり。「働かざる者食うべからず。自分のエサは自分で確保しなさい。私はいいの。女は生きているだけで偉いんだから」とビバップ号の番犬・アインに告げるSession #6「悪魔を憐れむ歌」など、とにかく名シーンを製造しまくる。彼女の過去に迫るSession #15「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」、Session#18「スピーク・ライク・ア・チャイルド」も忘れがたいエピソード。とくに後者のラストは、これまた涙なしで見られない。
 最後にビバップ号に乗り込むのは天才ハッカー・エド。演じたのは、現在はミュージシャンとして活躍する多田葵。無邪気かつ、捉えどころのないキャラクターで、ビバップクルーに入った個性派を演じた多田は、当時まだ10代。本作では無垢さだけではない、子どもならではの葛藤や自分で「選択」していくことの大切さを演じて、本作を一話完結の賞金稼ぎストーリーではないところまで引き上げていく。オススメはSession #9「ジャミング・ウィズ・エドワード」とSession #24「ハード・ラック・ウーマン」だ。

 

■ハードボイルド風な会話のセッション!

スパイク「この目を見ろ。事故で無くして片っぽは作りものだ。その時からオレは片方の目で過去を見て、もう一方で今を見てた。目に見えてるもんだけが現実じゃない、そう思ってた」

 

フェイ「そんな話しないで、身の上話なんかしたことない癖に。いまそんな話しないでよ」

 

スパイク「醒めない夢でも見てるつもりだったんだ」(以下略)

 

 これは最終話の一幕。こういった感じで、文字で書き連ねるとクサく感じるセリフでも、実際の劇中では、このセッション感がたまらない! むしろ、永遠に続いてほしいと思うほど。
ビバップ号とが違うが後半、もともとはマフィア組織「レッド・ドラゴン」の一員だったスパイクが、かつての相棒・ビシャスと対峙する場面も忘れがたい。銀髪でロングコートを身にまとい、刀でスパイクと対峙するビシャスを演じるのは、若本規夫。「天国を追い出された天使は、悪魔になるしかないんだ。そうだろう…? スパイク」と語る若本ビシャスはその声ゆえにヤバさが増幅している。
 なんといっても本作はゲストキャラクターの声優も超豪華な一作だった。大友龍三郎、中尾隆聖、富田耕生、玄田哲章、大塚芳忠、青野武、江原正士、土師孝也、内海賢二などなど、当時のベテラン声優が次々と登場していた。しかも、話数は別なれど、大塚周夫、大塚明夫は親子で出演している。
 ゲストで、とくに驚かされたのはSession #12&#13「ジュピター・ジャズ」前後編に登場するグレン。かつてのビシャスの戦友である哀しいサックス奏者、かつ身体の一部が女性化している複雑なキャラクターだ。演じたのは堀内賢雄で、儚げな存在感を体現している。
 次いでもうひとりを挙げるとすれば、作中最強レベルの戦闘能力を持つ殺人マシン「マッドピエロ」こと東風(トンプー)役の銀河万丈だ。頭のネジが完全に外れた役を演じる銀河の無双状態に、スパイクは防戦一方になるシーンもあるこの異色な回。そのキレっぷりや菅野よう子の音楽世界も相まって、陶酔すら感じられるほど。登場のSession #20「道化師の鎮魂歌」はアクション作画も素晴らしいため、ぜひ観てほしい一話だ。

 ともあれ、渡辺信一郎監督による映像表現や、シリーズ構成の信本敬子らが構築したセリフ劇のみならず、豪華な声優陣にも放送四半世紀の今年、注目したい『カウボーイビバップ』。25年前に観たあなたでも、いま観れば以前とは違う意味合いで、この物語の「声」が魂に響いてくるはずだ。

 

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