アニメや漫画では、ある一人のキャラクターが特別人気を集め、その人物のスピンオフが作られることがある。
そして今ではメジャーになっている作品の中にも、実はその主人公はもともと脇役で、本家の作品が別にあったという事例は少なくない。今回は、スピンオフ作品が有名になりすぎて本家の知名度をしのいでしまった作品と「大出世したキャラ」たちを紹介したい。
たとえば「漫画の神様」手塚治虫氏の代表的な作品で、日本で初めて放送されたアニメでもある『鉄腕アトム』。同作は、1951年から1952年まで連載された『アトム大使』の登場人物のアトムを主人公としたスピンオフ作品である。
『アトム大使』は地球人と地球に移住してきた宇宙人の共存と対立をテーマとしたSF作品。群像劇の要素もあり、アトムは地球人でも宇宙人でもないロボット少年という立場で両者の間に入り交渉を行うという役どころだった。
同作において、雑誌編集長が弱さや人間らしい感情のあるロボットを主人公にすることで読者に受け入れられると提案したことで、アトムの設定を少し変更して生まれたのが『鉄腕アトム』だった。
手塚氏の漫画では別作品にスターシステムとして同じキャラクターが登場するケースがあるが、アトムもまたそうした実験的な作品作りの中で生まれたキャラのひとりだった。
■長寿児童書の主人公も実は別作品のキャラだった
また、子どもに大人気の絵本シリーズで、アニメ化もされた原ゆたか氏による『かいけつゾロリ』シリーズの主人公・ゾロリもそうしたキャラの一人だろう。
もともとゾロリは、作:みづしま志穂氏、絵:原ゆたか氏の『ほうれんそうマン』シリーズのいたずら好きの悪役として登場していたキャラクターで、80年代に小学生時代を過ごした人にはこちらのほうが馴染みが深いかもしれない。同作はブタの少年・ポイポイがピンチのときにほうれんそうを食べて変身するという、アメリカのカートゥーン作品『ポパイ』をオマージュしたヒーローものだった。
『ほうれんそうマン』シリーズ終了後の繋ぎとして始まったのが『かいけつゾロリ』シリーズだったが、今となっては『かいけつゾロリ』シリーズは「同一作者によって物語とイラストが執筆された単一児童書シリーズの最多巻数」としてギネス世界記録に認定される長寿人気作品となった。
ちなみに、『ほうれんそうマン』シリーズの元ネタの『ポパイ』は『シンブル・シアター』という作品のスピンオフ。なんとも因果を感じる出来事だ。