球速165キロの藤村甲子園やメジャーまで二刀流を貫いた孫六も…まるで大谷翔平を予言していた? 野球漫画のキャラ3選の画像
さだやす圭『なんと孫六』16巻(講談社)

 WBCも二刀流でMVPを獲得し、侍ジャパンの世界制覇に貢献した大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)。もはや野球漫画の主人公を超えた存在といっても過言ではないだろう。だが、もともと野球少年たちはみんなエースで4番という選手も多く、野球漫画でも二刀流が活躍しているものである。そこで、大谷翔平の出現を予言していたかのような野球漫画のキャラたちを紹介していこう。

■球速165キロを1983年に実現していた「藤村甲子園」

 水島新司氏の野球漫画といえば『ドカベン』だけではない。続編の『大甲子園』や『男どアホウ甲子園』(原作:佐々木守氏、漫画・水島新司氏)に登場する「藤村甲子園」も只者ではなかった。祖父が付けたという“甲子園”という名前からして、インパクト十分である。

 藤村が漫画で活躍したのは1970年から連載が開始された『男どアホウ甲子園』のほうであり、こちらは甲子園大会で優勝投手となっている。また、打撃のセンスも抜群でまさに二刀流といえる存在だろう。

 彼は1983年から連載が開始された『大甲子園』では、すでに引退して甲子園のグラウンド整備員になっていた。実は阪神タイガースにプロ入りした藤村は、1年目から32勝、2年目に33勝ととんでもない活躍を残す。だが、3年目に至上最速の165キロをマークすると同時に肩を故障してしまい、そのまま引退となっている。

 時間軸的には、主人公・山田太郎たちより前の世代で『大甲子園』では活躍している姿は見られなかったものの、現役時代は凄まじい投手だったのだろう。ちなみにあの岩鬼を前にしてもたじろかないほどの風貌だった。

 それにしても70年代後半から80年代前半のプロ野球では、最高球速も150キロ台。スピードガンの精度は今と違うだろうが、それでも160キロなんて夢の領域だったものだ。日本人最速といえる大谷翔平の165キロと同じなんて、水島氏の予言には恐れ入ってしまう。

■サブマリンで奪三振の山を築いた契約金10万円の二刀流「山田太一」

 1991年から連載スタートしたこせきこうじ氏の『ペナントレース やまだたいちの奇蹟』の主人公として登場する「山田太一」。彼も投打で活躍していた。この漫画には実在する選手も数多く登場するのだが、山田が所属するアストロズの監督はなんと名将・三原脩だったことに驚いたものだ。

 山田は入団テストを経て、契約金10万円とまるで入社祝い金のようなビックリの破格で入団し、ダメ選手といわれながらも抜群の成長力を見せて主軸打者として活躍していく。常にフルスイングで本塁打を量産していくのだが、なんといっても魅力はたまたま抜擢された投手力。しかもアンダースロー(サブマリン)で投げるのだから、野球漫画では変わった主人公だったな。

 ところで、"山田”でサブマリンといえば、当時引退してまもない阪急ブレーブスの山田久志がいたものだ。筆者は大阪出身の野球少年だったから、甲子園よりも近い西宮球場にはよく足を運んだものである。この漫画を読んでいるとき、伝説のサブマリンを思い出してニヤっとしたものだった。

 さて、話を戻すとこの山田はオールスターで、なんと10連続奪三振という離れ業をやってのけている。漫画では振り逃げがあったものの、これは大谷翔平や江川卓でも達成していない快挙だ。ちなみにオールスター限定でいうと、現在の日本記録は1971年の江夏豊の9連続奪三振。というか、これも十分に凄まじいのだが……。

 また、大谷翔平はフルスイングで長打を放つが、この山田も負けてはいない。途中から投手で活躍しながら、打者はフル出場で本塁打と打点の二冠王に輝いていたぞ。

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