『ジョジョ』カーズに『火の鳥』マサトも…死んでも死ねない“不死身すぎて逆に気の毒なキャラ”3選の画像
角川文庫『火の鳥』第2巻 未来編 (KADOKAWA)

 漫画やアニメで“不老不死”や“永遠の命”を求めるキャラクターはたびたび登場するが、人生に終わりがないことは果たして幸せなのだろうか? 今回は、“死ねない”ことが逆に気の毒に思えてくるキャラを3人紹介したい。

■考えるのをやめる境地に…『ジョジョの奇妙な冒険』カーズ

 荒木飛呂彦氏による『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する不死身キャラが、2部のラスボス的立ち位置に存在するカーズだ。

 人間ではなく、寿命が非常に長いが太陽光に極めて弱い「闇の一族」の出身である。陽の光の当たらない地下で生活をしていたが、一族のなかにあるとき天才が生まれてしまう。それがカーズだった。

 彼は“あらゆる恐怖の克服”を目指し、闇の一族の最大の弱点である太陽光を克服した「究極生命体(アルティミット・シイング)」を追い求め、研究に手を染める。その危険な思想を止めるために一族から抹殺されそうになるも、彼は一族を皆殺しにし、残った数人の仲間と旅に出るのだった。

 そしてカーズは現代に蘇り、ジョセフたちとの戦いのなかで「究極生命体」をついに完成させ、太陽光も波紋も受け付けず、火山のなかに身を投じても生還することができるようになってしまう。

 最終的に、カーズは噴火によって宇宙へと追放され、鉱物と生物の中間の存在となって永久に宇宙をさまようことになる。「そして 死にたいと思っても死ねないので ーそのうちカーズは 考えるのをやめた」のである。

 動けずに無窮のときを彷徨うことになったら、考えるのをやめることしかできないのも当然だろう。その境地に至るまで、彼は何を考えたのだろうか。敵キャラではあるが、ある意味不憫に思えてならないキャラである。

■30億年も孤独を味わうことになった『火の鳥』山之辺マサト

 “人類はどこからやってきてどこへ行くのか”というテーマで描かれる手塚治虫氏の『火の鳥』にも、不死身すぎて気の毒なキャラが登場する。「未来編」の主人公・山之辺マサトだ。

 彼が生きるのは、幾度とない戦争と兵器の使用で枯れ果てた地上を逃れ、人類が地下へと潜った未来の世界だった。宇宙戦士のマサトは宇宙生物ムーピーのタマミを違法に匿っていたことで追われる身となり、タマミと2人で地上へと命からがら逃げ出す。

 それからまもなく人類は核戦争で滅亡を迎えてしまうのだが、このときマサトの前に火の鳥が現れる。そして、火の鳥から不死の力を与えられたマサトは、“次の人類が生まれるまで世界を見守る”という使命を与えられることとなった。

 500年が経ちタマミの寿命が尽き、マサトはひとりぼっちに……。それからも、死ねないマサトの孤独は続いていく。やがて肉体は滅び彼は“意識だけ”の存在となり、地球も再び生命を宿すが、次の人類の誕生までの間にはナメクジが繁栄するなど、なかなか簡単に人類は生まれない。

 そうして30億年が過ぎた。マサトがとうに自分の名前すら忘れてしまったころ、やっと人類が生まれたことで彼は使命から解放される。そして、火の鳥の「宇宙生命(コスモゾーン)」に取り込まれ、そのなかでマサトはタマミと再会するのだった。

 この最後のシーンには、ここにいたるまでのマサトの苦労や孤独を思い、涙してしまう人も少なくないだろう。未来編以外にも“可愛そうな人”が多く登場する『火の鳥』だが、そのなかでもマサトの境遇は屈指の理不尽さと気の毒さがあるように思えてならない。

  1. 1
  2. 2