■数々の商売経験が生み出した“ゼニ”との向き合い方……青木雄二

 1990年に『モーニング』(講談社)にて連載が始まった青木雄二氏による『ナニワ金融道』は、大阪の消費者金融に務める営業マンを主人公に、“借金”という概念に焦点を当て、さまざまな人間模様を描いていく作品だ。

 青木氏は『ナニワ金融道』を描くのみならず、「お金=ゼニ」との付き合い方、向き合い方についての著書も手掛けている。これらはいずれも、“お金儲け”について長らく研究を行ってきた青木氏の実体験、過去が深くかかわっているのだ。

 世の中でお金を儲けている人々は、いったいどのようにお金と向き合っているのか……それを研究しようと、なんと青木氏は30回以上も転職を繰り返し、ありとあらゆる職種を体験して徹底的に世の中の仕組みを勉強したのである。

 その内容はパチンコ店の店員や、キャバレーのボーイなどの水商売まで多岐にわたる。さまざまな世界を実際に体験することで、どのように“お金”が動いているのかを知り、そして、どんな“裏”が存在するのかを身をもって学んだのだ。

 青木氏は数々の実体験の末、ドストエフスキーの『罪と罰』を読むことで「人間の真実を、高利貸しの話を通じて描くことができるのではないか」という答えに辿り着いたそうだ。その答えの結晶体こそが、青木氏を代表する一作『ナニワ金融道』ということなのである。

 “ゼニ”とは人生でどういう役割を担うのか、どういう人間が最終的に儲かるのか……いわば『ナニワ金融道』は、青木氏が導き出した答えを人々に伝える“ゼニを稼ぐためのバイブル”とも呼べる一作とも言えるだろう。

 我々も普段、生きるために常日頃から触れている“お金”だが、その本質を見抜くために数多の職を渡り歩いたというその姿勢には、ただただ驚いてしまう。どこか執念のような凄まじい想いを感じざるをえない、強烈なエピソードだ。

 

 漫画といえば作品のストーリーや内容にばかり目が行きがちだが、それを作り上げる漫画家たちの過去や背景にも目を向けてみると、思わぬ経歴に驚かされてしまう。

 いずれの漫画家も、今までの“生きざま”が作品の“色”となって濃く現れており、リアリティや深みとなって読者たちを惹きつけ続けるのであろう。

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