■花のような模様を生み出せた『くるりん定規』

 ここからは80年代に誕生し、今なお継続・復刻で愛され続ける昭和文具を紹介したい。

 まずは、歯車状のパーツ穴にペンを差し込み、プラスチック製の板(定規)に空いた円の中で回すと幾何学模様が描けた「くるりん(スピログラフ)定規」。他にも「ローリングルーラー」や「デザイン定規」などの商品名があるが、筆者の周りでは「くるくる定規」とも呼ばれていた。

 この文具はギアの大きさや穴の位置、さらに定規の形が変わること(組み合わせ)で花や雪の結晶にも似たデザインが何通りも楽しめるのだ。ちなみに、鉛筆などよりボールペンが一番きれいに描けたが、グルグル回し過ぎると筆圧でよく紙が破けた。

■便利で面倒だった『ロケット色鉛筆』と『ポケットカラーペン』

 今も文具売り場などで時折見かける「ロケット鉛筆」は、ペン型のプラスチックケースに先の尖った鉛筆の芯が縦に10本ほど連なった鉛筆削り不要の筆記用具で、これは1977年の発売以降、昭和の時代に愛されたアイテム。「ロケット鉛筆」には色鉛筆タイプもあったが、12色の色鉛筆の芯を1本のペンに「縦入れ」するため目的の色を出すまで骨が折れた。

 そんな「縦入れ」と逆の発想が、少し太めのペンに20色ほどの色鉛筆の芯を「横入れ」した「ポケットカラーペン」。こちらは短い色鉛筆の芯をペン先に入れて使うタイプで、「ロケット鉛筆」が男子に人気だったのに対し、そのカラフルな見た目から女子の間で人気となった。

■黒い紙にも可愛くパステル文字が書ける『ミルキーペン』

 筆者が小学生だった頃、女の子同士の交流手段としてキャラクターメモと「ミルキーペン」は外せなかった。男性はあまりご存じないかもしれないが、「ミルキーペン」とは主に黒や濃い色の紙に使うパステルやメタルカラーのボールペンだ。もちろんノートにも使うことが出来るが、その実力を発揮したのは友だちへの「お手紙」やカードの「装飾」だった。

 見た目と握った感触がおもしろかった「うずまき鉛筆」も、昭和の時代に子どもたちの間で使われた文房具のひとつ。鉛筆の軸に「うずまき」の溝が入っているというもので、筆者が使っていたのは銀色の装飾が施されていたためドリルやボルトのような硬派なイメージだった。当時はただ「おもしろい」とだけ思った鉛筆だが、記事を書くにあたり「正しい持ち方」が身につく設計と分かり驚いた。

 今回紹介した昭和文具は、遊び心満点なものから実用的なものまで多岐に渡っている。その利便性から現在も販売されている物や、残念ながら私たちの思い出の中だけとなった物まであるが、これからも私たちの筆箱をパンパンにする愛すべき「宝物」が生まれるのを楽しみにしたい。

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