眠りのなかで、脳が記憶を整理する影響で見てしまう“夢”。荒唐無稽にさまざまな情景が入り乱れる夢の世界は、ときに楽しく、ときに恐ろしいものだが、漫画やゲームにはこの“夢”を利用して戦うキャラクターが存在する。人々の“夢”を利用する摩訶不思議なキャラクターたちについて見ていこう。
■悪夢で人間を弄ぶ十二鬼月の“眠り鬼”!『鬼滅の刃』魘夢
2016年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載された吾峠呼世晴氏の『鬼滅の刃』は、その爆発的なヒットから国民的作品としてブームを巻き起こし、国内外問わず凄まじい人気を誇る作品だ。
本作には人間たちの敵として立ちはだかる数々の“鬼”が登場するが、人間の“夢”をコントロールする力を持つのが、精鋭部隊・「十二鬼月」の一人、下弦の壱・魘夢(えんむ)だ。
魘夢は見た目こそ洋装の青年といった出で立ちだが、人々の宿敵・鬼舞辻󠄀無惨の命を受け、劇場版『無限列車編』に登場する敵として、鬼殺隊の面々に立ちはだかる。
作中に登場する鬼たちは皆、それぞれ固有の“血鬼術”と呼ばれる能力を持っているが、魘夢は人々を眠りに誘い、夢の世界に閉じ込める“夢操作”を得意としている。
この能力は対象を無力化させることはもちろん、人々の心のなかにある“精神の核”を壊すことで、精神を崩壊させることができてしまう。加えて、自身が選んだ誰かを夢のなかに送り込むこともできるため、自身が手を下さず安全に攻撃を加えることが可能なのだ。実際、作中で魘夢は主人公・炭治郎を含め、列車の乗客を一斉に眠らせることに成功している。
そのほかにも、“声”や“視線”によって対象を強制的に夢の世界に引きずり込むことができる技を持っていたりと、このような隙のない立ち振る舞いはさすが十二鬼月といったところだろう。
ちなみにこの“夢”から抜け出すためには、夢の世界で“死ぬ”ことが必要になる。仮に夢の世界だと理解していても自決することは容易ではなく、ましてや見ている夢の世界が幸福であればなおさらだろう。
直接的な攻撃ではないものの、身に着けた“夢”を操る力で列車の乗客たちを文字通り“悪夢”のどん底に突き落とした、なんとも恐ろしい鬼の一人である。
■“死神”の力を操る本体はまさかの生後11カ月の赤ん坊!?『ジョジョの奇妙な冒険』マニッシュ・ボーイ
1986年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載されている荒木飛呂彦氏の『ジョジョの奇妙な冒険』。本作は部ごとに世代や舞台となる国、キャラクターたちが変化していくのが特徴だが、第3部『スターダストクルセイダース』の作中に、“夢”を操る能力を持つ敵キャラが登場している。
エジプトを目指して旅を続けるジョースター一行は、ひょんなことから赤ん坊を預かることになってしまうのだが、この生後11カ月の赤ん坊こそ敵のスタンド使い、マニッシュ・ボーイであった。
彼は生まれつきの天才児で、大人顔負けの高度な頭脳と悪意を使い、手練手管でジョースター一行を苦しめていく。
特筆すべきは彼が持つスタンド「デス・サーティーン」であり、その能力は眠りに落ちた人間を“夢”のなかに引きずり込み、攻撃を仕掛けるというもの。
夢のなかで怪我を負うと現実世界でも同様のダメージを受け、最悪の場合、死に至ってしまう。しかもこの能力が恐ろしいのは、夢の世界にこちらのスタンドを持ち込むことができず、かつ目が覚めると自身が攻撃を受けていたことを忘れてしまうという点。
すなわち、“夢”に引きずり込まれた者は一切の反撃を許されず、マニッシュ・ボーイの思うままに、一方的に切り刻まれることとなってしまうのだ。能力の凶悪さもさることながら、本体が赤ん坊であるということになかなか気付けず、カモフラージュもばっちりであるということも、実に恐ろしい。
楽し気な“夢”のなかで展開されるおぞましい所業の数々は、登場人物だけでなく読者にも精神的ダメージを与えた、強烈なインパクトを残したキャラクターである。