美女の色気や魅力にうつつを抜かしてしまうのが男の“さが”というものだが、漫画やアニメの世界でもそれは変わらない。バトル漫画に登場する女性は、ときに自身の美貌すらも利用し、男たちを窮地に陥らせてしまう。
作中でハニートラップの餌食にあってしまった、哀しき男性キャラクターたちのエピソードについて見ていこう。
■恋した相手は実は“肉人形”…!?『ジョジョの奇妙な冒険』ジャン=ピエール・ポルナレフ
1986年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載を開始した、荒木飛呂彦氏の『ジョジョの奇妙な冒険』には、“魂のヴィジョン”と呼ばれる特殊な力「スタンド」を操るキャラクターが多数登場し、各々の能力を駆使してさまざまな時代、場面で激突する。
本作の第3部にてハニートラップに引っ掛かり、仲間の窮地を見逃してしまった男こそ、ジョースター一行に加わり旅を続けるフランス人の青年・ジャン=ピエール・ポルナレフだ。騎士道精神を重んじる性格だが、一方でどこかフランクで軽いノリを忘れない、なんとも憎めないキャラクターである。
彼は戦いの最中で16歳のネーナという女性を保護するのだが、実は彼女もまたジョースター一行を抹殺するために送り込まれた“スタンド使い”の一人だった。ネーナはスタンド「女帝(エンプレス)」を仲間の一人・ジョセフの腕に憑りつかせ、彼を殺害しようと襲い掛かる。
ジョセフはなんとかしようと街中を駆け巡ることになるのだが、ネーナはすぐそばにいるポルナレフがジョセフに気付かないよう、あの手この手で気をそらす。挙句、彼女はポルナレフに“恋心を抱いている”と告白……舞い上がってしまったポルナレフは、窮地に立たされているジョセフに気付いてあげられず、魅了されてしまった。
結果的に機転を利かせたジョセフによってスタンド「女帝(エンプレス)」は敗北するのだが、これを受けてネーナもまた致命傷を負ってしまう。実は美女に見えていたのは、彼女の能力で作り上げた“肉人形”だったのだ。その醜悪な正体に、ポルナレフも思わず驚愕していた。
非力で可憐な“擬態”にまんまと騙されてしまい、仲間の重大なピンチを見逃してしまうという、なんとも情けないエピソードである。
■女性への優しさすらも仇に…『ONE PIECE』サンジ
1997年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載され、今や国民的人気作品となった尾田栄一郎氏の『ONE PIECE』だが、麦わらの一味のなかで女性がらみのトラブルが多いのが、一味のコックを担当するサンジだ。
もともとサンジは極度の女好きで、一味のナミやロビンだけでなく、行く先々で出会う女性にナンパを仕掛ける場面も珍しくはない。そんな彼の女好きが災いしてしまったのは、エニエス・ロビー編にて対峙したカリファとの戦いである。
ロビン奪還のために敵地へと乗り込んだサンジだったが、敵側の幹部の一人・カリファはその美貌を存分に活用し、彼を攻め立てる。胸元を見せる、組んだ美脚で誘惑するなど、ありとあらゆる色仕掛けに耐え切れず、サンジは敵地であることも忘れ彼女に飛び掛かってしまう。
案の定、この隙を利用されて一撃を加えられただけでなく、サンジは“女性は攻撃しない”という信条を貫くために、わざと決定打となる一撃を自ら外していく。なんとか気迫でカリファに敗北を宣言させたいサンジだったが、彼女がそんなことで降伏するわけもなく、一方的に攻撃を受け続け、結果、敗北してしまった。
ロビンを救うという一刻を争う状況でありながら、サンジが持つ女性への“優しさ”が裏目に出た一戦である。とはいえ、戦いには負けてしまいつつも「…たとえ死んでも おれは女は蹴らん…!!!!」と、己の芯を守り通した彼の信念を垣間見ることができるこのエピソード。実にサンジらしい……。