いきなりジ・エンド? 主人公が“第1話”で死亡したアニメ&漫画をふり返る「一体全体この先どーなるの?」の画像
アフタヌーンKC『亜人』第1巻(講談社)

 作品の中心として物語をけん引していく存在が「主人公」だ。そのため、多くの読者は主人公の成長や冒険などを楽しむが、もしも彼らが途中で「リタイア」したなら物語はどうなるのだろうか?

 たとえば『ベルサイユのばら』では、主人公オスカルが凶弾に倒れた後も物語は続き、史実通りアントワネットが断頭台に立つまでが描かれ完結した。ゲーム『ロマンシング サ・ガ2』では、プレイヤーである主人公が「継承システム」で死なないことには物語が進まず、お気に入りのキャラとの死別が辛い思い出となった。

 今回は異世界で生まれ変わる「異世界転生」ではなく、「現代」を舞台に主人公が“第1話”で「死亡」した例をふり返ってみたいと思う。

■人間なら「死ぬ」のに「死ぬことがない」悲劇

 まずは『good!アフタヌーン』で2012年から2021年まで連載された桜井画門氏によるダークアクション『亜人』から。同作は、2015年から2016年にかけて劇場アニメやテレビアニメ、2017年には実写映画が制作された人気漫画だ。

 主人公の永井圭は優秀な頭脳を持つ高校生だが、ある日トラックに轢かれ「死んで」しまう。ところが、腕がもげ、頭から脳が出た状態であるにも関わらず、圭の身体は欠損部分が再生しながら生き返ったことで「亜人」であることが判明する。

 政府は「亜人」研究のため彼らを捕獲しようと躍起になっており、圭は報奨金目当ての人間や組織からも追われる身となるのだ。

 本作は主人公が一度は「死亡」してしまうも、死なない新生物「亜人」と判明したことにより物語が動き出す。

 圭と似た状況として『東京喰種 トーキョーグール』の主人公・金木研があげられるが、彼の場合は瀕死状態で喰種の臓器を移植され「半喰種」となってしまう。とはいえ、死を経て「人間」から「異形」となったことで、作中ではどちらも散々な目に遭っている。

 また、主人公が他の「何か」になるのが物語の肝であり、それが作品タイトルにも反映されているのではないだろうか。

■「死んだはず」の人間が命がけのミッションに挑む

 少年漫画などで主人公が試練を受ける展開はよくあるが、自身の「生き返り」がかかっているとしたら文字通り命がけとなるだろう。

 奥浩哉氏の『GANTZ』は、『週刊ヤングジャンプ』にて2000年から2013年の長期に渡って連載され、テレビアニメや実写映画など多くのメディア展開がされた人気作品だ。

 主人公の高校生・玄野計と加藤勝は地下鉄の線路に落ちた人を助ける際、電車に轢かれて「死んで」しまう。だが、気づくと元の姿のまま謎の部屋に転送され、自分たちと同じ「死んだはず」の人間たちとともに「ガンツ」のミッションを実行することになる。

 計と勝は「再生」されるが、ガンツから解放されるため理由の分からない戦いを続けなくてはならず、失敗すれば再び「死亡」というかなりハードな状況になってしまう。

『幽☆遊☆白書』の主人公・浦飯幽助も子どもを助けて事故死するが、彼もまた生き返るための試練を受けている。ちなみに両作とも他人の命を救うために死んでいるが、その後も大勢の命のために壮大な戦いを繰り広げている点が共通している。

■アイドルを夢見る少女が朝、トラックにぶつかって…

 2018年10月4日の初回放送で視聴者から「衝撃」の声が多く聞かれたアニメ『ゾンビランドサガ』は、7人の「ゾンビ少女」がアイドルとして活躍するブラックコメディ。佐賀県を舞台に異色コラボなどで話題となった本作は、2021年4月8日から第2期『ゾンビランドサガリベンジ』が制作された。

 アイドルに憧れる主人公・源さくらは、新人メンバーオーディション応募の封筒を手に夢を抱きながら登校しようとかけ出す……が、家の前でトラックにはねられ「死んで」しまう。放送開始わずか1分14秒後の悲劇だが、リアルタイムで視聴した多くのファンも度肝を抜かれた伝説回だ。

 さくらが目を覚ますとそこは「ゾンビ少女」だらけの洋館で、自身も「ゾンビ」となったうえ「記憶を失って」いることに気づく。

 さらに、アイドルプロデューサーを名乗る巽幸太郎から自分が十年前に亡くなっていること、なぜか「佐賀県」を救うため他のゾンビ少女と「アイドルグループ」として活動する旨を聞かされる。

 ゾンビになっただけでも大事なのに、佐賀を救うためアイドル活動をしたり死んでから10年経ってるし記憶を失ったりと、再スタートしたさくらの人生(?)は波乱万丈だ。

 同じくゾンビになった作品としては、高田裕三氏の『3×3 EYES』を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。同作の主人公の藤井八雲は、妖怪「三只眼吽迦羅(さんじやんうんから)」の生き残りであるヒロイン・パイにより不死人「无(ウー)」となる。他にも『怪物王女』などもあげられるが、どれもが彼らを導く存在であり主人公を「不老不死」にした人物だ。

 今回紹介した「第1話で死亡」を経験した主人公の場合、その多くがハードモードな展開となるため思わず目を覆いたくなる場面が多い。だが、そんな彼らだからこそ、読者は物語の最後まで見届けたくなるのかもしれない。