『キングダム』でこんなにも立っていた“死亡フラグ”の数々…王騎に麃公、成蟜もの画像
『キングダム』Blu-ray BOX ~王騎落命篇(エイベックス・ピクチャーズ)

 激しい戦闘シーンとドラマティックな展開が胸を熱くする、原泰久氏の『キングダム』。数多くの魅力的なキャラクターが登場してはその命を散らしていくため、自分の好きなキャラが命を落とすシーンは何度見ても心が痛むものだ。

 しかし多くのキャラクターにはまもなくの死を予感させる、いわゆる“死亡フラグ”というものが存在していたりもする。今回は『キングダム』で立っていた“死亡フラグ”について紹介していきたい。

 

※以下には、コミック『キングダム』の一部内容が含まれています。ストーリーを解説するのが本記事の主目的ではありませんが、気になる方はご注意ください。

 

■まさか本当に死ぬなんて...目を背けたかった王騎の死亡フラグ

 まずは、秦の六将・王騎について紹介しよう。主人公・信に「飛信隊」という独自の部隊や愛用の矛を託し、“天下の大将軍”とはなにかを説く師匠的な存在として人気を博した王騎。重要人物でありながら、物語的にはあまりに早い死を遂げたため、衝撃を受けた読者も多いだろう。

 しかしあらためて読み返してみると、彼の死を予感させるシーンはいくつかあった。

 まずは、第113話「馬陽」で、王騎が古い付き合いである昌文君と語らうシーン。なぜ急に戦う気になったのかと尋ねる昌文君に対し、王騎は唐突に昔話をはじめ、初対面からを振り返って戦場では幾度も助けられたと感謝を述べる。

 そして今回の出陣先である馬陽が、過去に王騎の妻となるはずであった摎が死亡した地であることや、その馬陽での戦をもって過去の自分と決別し、新たな覚悟で未来へと歩み始めるつもりでいることが明かされる。

「この戦いを決着として……」という王騎のセリフや、終始含みを持たせた2人のやり取りに「この2人、もう会うことはないのでは?」と感じた読者もいただろう。

 そして、その後の第115話「龐煖」。9年前に摎を殺し、王騎に殺されたはずの龐煖が今回の戦で趙軍の大将として出陣すると知り、昌文君が驚きを見せるシーン。昌文君はここではじめて、王騎が戦に向かった真の理由を知る。2人の因縁を利用して王騎と龐煖をぶつけた名将・李牧登場の恐ろしさも相まって、より不穏な空気は濃くなっていく。

 さらに、第155話「北の軍」で、趙本陣を追いつつも自らがなんらかの策にはめられているのではないかと王騎が違和感を覚えるシーンも不気味だった。これらすべてが今後の展開が明らかに悪い方向に向かっていくことを示唆しており、「もしかして王騎は……?」と最悪の結末を想像してしまう印象的なシーンとなっていた。

 李牧の策のように巧妙に散りばめられた王騎の死亡フラグ。原氏の秀逸なストーリー展開にドキドキさせられた読者は多いだろう。

■“流動”を抜けた先に用意されていた麃公の死亡フラグ

 続いて、秦の大将軍・麃公(ひょうこう)を紹介したい。信の初陣である「蛇甘平原の戦い」で秦軍の総大将として登場した麃公は、戦を「燃え盛る一つの大炎」のように捉え、戦況の変化をいち早く察知する“本能型”の才で長年戦場に立ち続けてきた武将だ。

 そんな麃公の死亡フラグはあまりに突然だった。

 5つの国が同盟を結んで生まれた“合従軍”に攻め込まれる「函谷関攻防戦」にて、各地で善戦を続けた秦軍は、見事“合従軍”を全軍退却させることに成功する。秦が希望に満ち溢れたのも束の間、李牧は別動隊を率いて秦の王都にじわじわと迫っていた。

 敵の怪しい挙動にいち早く気づいた麃公は飛信隊とともに李牧軍を追撃し、李牧の戦術である“流動”をかいくぐり、ついに李牧を捉えたかに思えた。しかしそこにまたしても、王騎を落とした龐煖が現れるのである。

 麃公の死亡フラグは、まさしくこの龐煖が現れたシーンだった。李牧の「ここで死ぬのはあなたです」という言葉とともに、見開きいっぱいに登場する龐煖の姿に何かを察した読者も多かっただろう。

 龐煖(ほうけん)の圧倒的な武力に押された麃公は、最終的に信に愛用の盾を託し「童 信」「前進じゃァ」と、自身を置いて先に進むよう命令するのである。

 ここでの麃公の奮戦がなければ、この後の信と龐煖の戦い、ひいては秦の滅亡は免れなかったかもしれない。信の成長には欠かすことのできない、おじいちゃんキャラらしい見事な最期だったことは言うまでもない。

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