2022年12月3日に公開された、井上雄彦氏の映画『THE FIRST SLAM DUNK』。現在、8週連続1位、興行収入は89億を超え、その勢いが止まらない(1月26日時点)。
高校バスケを題材にし、1990年から6年間にわたって『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された漫画『SLAM DUNK』は、躍動感のある試合の描写をはじめ、熱い男たちの青春模様が描かれた名作だ。作中には彼らが思いあまって涙を見せるシーンもあり、それがまた本作の魅力をぐっと色濃くしているような気もする。
そこで今回は、過去があるからこそ美しかった彼らの“男泣き”名シーンを紹介しよう。
■バスケから離れた過去を悔やんだ三井
三井寿の男泣きといえば、「安西先生…!!」「バスケがしたいです……」を思い出す人も多いと思うが、陵南戦で見せた男泣きも同じくらい印象深いシーンだ。
インターハイ最終予選で強豪・陵南と対戦した湘北。安西先生不在のなか健闘するも、ファウルトラブルがかさんだうえ、エース・仙道彰の猛追にあい、苦しい展開を迎えていた。
「安西先生のいない時こそ オレが やらなきゃ…」と決意を見せる三井だったが、残り約2分、ついに限界を迎えて倒れてしまう。
缶ジュースの蓋すら開けられないほど疲弊した自らの状態に愕然とした様子を見せ、「なぜオレはあんなムダな時間を……」と、一人静かに涙する三井。
元中学MVPと注目されていた彼は一度バスケから離れ、グレた過去があった。予選で強豪・翔陽と対戦した際には「ここで働けなけりゃ…」「オレは ただの大バカヤロウだ」と気力体力を振り絞り活躍を見せていたが、この陵南との試合でもチームのために、恩師・安西先生のために“働きたかった”という気持ちが痛いほど伝わってくる。
その後、ベンチに戻った三井は息を切らしながらも声援を送り続け、「考えろ ここで安西先生ならどうする」と、“湘北のブレイン”としてチームに寄り添おうとした。過去を悔やみ、それでも前を向いてチームに貢献しようとする彼の姿に感銘を受けた読者も多いのではないだろうか。
■3年間がんばってきた木暮の涙
湘北の副キャプテン・木暮も男泣きしたシーンがあった。
インターハイへの残り1つのイスをかけた陵南との試合。安西先生は不在、残り2分を残してスコアラーの三井は倒れる……と、最悪の展開を迎えていた湘北。
倒れた三井と交代し試合に加わった木暮は果敢にシュートに向かい、「悔いは残さん——」と決死の思いで挑んでいた。
残り1分、1点リードとどっちに転んでもおかしくない状況だったが、木暮は「ここをとって3点差にすれば…!!」と、密かに目論んでいた。そして、フリーでシュートを打つ機会が訪れ、彼は見事3ポイントシュートを決める。そして、このシュートが決定打となり、見事湘北は全国の切符を手にした。
三井や流川、桜木の加入によりスタメンから外れてしまったが、彼はいつもベンチから声援を送り、“縁の下の力持ち”としてチームを見守ってきた。作中では描かれていないが、きっと普段から練習を欠かさず行い、“シックスマン”としていつでも試合で貢献できるようにと、準備を行ってきたのだろう。
「メガネ君」「引退がのびたな」という桜木に、「泣かすなよ…問題児のクセに」と言いつつ涙した木暮。いろんな思いが詰まった涙だったのだろう。陵南の田岡監督の「あいつも3年間がんばってきた男なんだ」の言葉に、すべてが集約されていると思う。