■おじさんたち…「オヤジ」「じじい」「じい」など

「白髪鬼」「勝負師」など、数々の通り名を持つ湘北の監督・安西先生。本名は安西光義、桜木は親し気に「オヤジ」と呼ぶ。一方、陵南の監督・田岡監督は「じじい(ジジイ)」、海南の高頭監督も「ジジイ」と憎まれ口を叩かれはしたが、田岡監督にいたっては練習試合のときからそう呼ばれ続け、もう半分あだ名と化している。

 また海南キャプテン・牧紳一も、見た目が老けているという理由から「じい(ジイ)」と呼ばれている。宮城も口にこそ出さないが内心「オッサン」扱いをしていた。

 一方で清田も同様に赤木のことを「オッサン」と呼んでおり、両キャプテンの高校生離れした成熟度合(?)が窺える。当の牧は田岡監督の「じじい」と自分の「じい」を比べて「まだマシかな」と言っており、精神的な成熟度も高い。

■第一印象からつけられたあだ名の数々…「メガネ君」「カリメロ」など

「メガネ君」で知られる湘北副キャプテン・木暮公延。同じメガネキャラでも翔陽高校の花形透は「メガネ」と呼び捨てなので、木暮に対して一定の敬意はあるのだろう。その花形と同じ翔陽の藤真健司は、監督業も兼ねるため試合序盤ベンチにいたところ、「ホケツ」「ホケツ君」と呼ばれた。

 また、インターハイでは心なしかあだ名まで冴えてくる。豊玉高校の南烈はアニメ『カリメロ』主人公の黒いヒヨコに似ていることから「カリメロ」、浪人のように長髪を一つ結びにした岸本実理は「チョンマゲ」。

 山王工業高校は、センター・河田雅史が赤木を丸くした感じなので「丸ゴリ」、その弟・河田美紀男は丸いフォルムから「丸男」、坊主頭ですばしっこい沢北栄治は「小坊主」、桜木を苦しめたリバウンドの名手・野辺将広はトーテムポールに似ているという理由から「ポール」と呼ばれた。

 対して、山王の面々は桜木のことを「赤坊主」と呼んでおり、彼らにとって桜木がいろんな意味で印象深い存在だったことが窺える。

■特別な二人…「ルカワ」「センドー」

 ところで、桜木があだ名をつけずに苗字で呼ぶキャラクターが二人いる。流川と、陵南の仙道彰だ。流川はたまに「キツネ」と言われることもあるが、基本はカタカナ表記で「ルカワ」、仙道も同様に「センドー」である。たしかに中高バスケ界で有名なこの二人は、その名前自体がすでに特別で、一種のあだ名のようなものだ。

 それは桜木にとっても同じなのだろう。流川は身近なライバル、仙道は越えるべき壁として、ほかの手強い対戦相手たちとは一線を画す、特別な二人なのかもしれない。

 

 近年では、いじめの助長になるという理由からあだ名を禁止している学校もあると聞く。たしかに見た目をあだ名にされて傷つく人は多いだろう。それでも桜木のあだ名が不快でないのは、そこに悪意や他意が一切なく、言われるほうも受け入れているからだ。

 現在公開中の映画『THE FIRST SLAM DUNK』でもやっぱり、桜木は彼らを「ゴリ」「ミッチー」「リョーちん」と呼ぶ。仲間をあだ名で呼ぶ関係に懐かしさと微笑ましさを覚える大人は、意外と多いのではないだろうか。

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