■最後もやっぱり「どあほう」だった
流川の桜木に対する評価がもっとも表れていたのは、山王工業高校との試合だろう。
高校バスケ界の頂点相手に粘り強いプレイで食らいつく湘北。後半残り2分半、ルーズボールを追って机に突っ込んだまま動かなくなった桜木に流川が「いい仕事したぜ」「下手なりに」と初めて正面から誉める。「だれがヘタナリにだ コラァ!!」と起き上がった桜木だったが、実はこのとき背中を痛めていた。
その異変にいち早く気づいた流川は、痛みに気を取られる桜木に対して「集中力が足りん」と声をかける。そして、IH前に桜木から1on1を挑まれて完勝したことを持ち出し、「あん時の方がまだマシだったぜ」「オレに全力を出させたんだからよ」と暗に桜木を認めていることを示したうえで、「必死でついてこい」「交代しねーならよ」と続けた。
ライバルと言いながら実際には経験もスキルも流川のほうが遥かに上だということには、桜木も口にはしないが気づいている。そんな流川が桜木に発した言葉だからこそ、響くものがあっただろう。
しかしラスト1分半を切ったところで、痛みに耐えかねて倒れる桜木。一度は交代するも、未来よりも「今」を優先すると決めた桜木は無理を押してコートに戻ろうとする。
そんな桜木に「出るなら出ろ(どあほう)」と、決意を支える形で喝を入れた流川。これに後押しされ、意地を張ってコートに戻る桜木。最後まで意地の張り合いの二人の関係は、まさに「終生のライバル」と呼ぶにふさわしい。
無口な流川から桜木に向けて発せられる喝の数々は湘北の勝利を目的としたものだが、裏を返せばそれは“湘北の勝利には桜木の力が必要だと認めている”ということになるだろう。流川と桜木の関係は“友情”などとは程遠いが、表に出ない“熱い何か”がたしかに感じられる。