『SLAM DUNK』“湘北の司令塔”宮城リョータが試合で見せたクレバーな判断力! 翔陽戦や山王戦での活躍を振り返るの画像
『SLAM DUNK』Blu-ray Collection VOL.4(TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D))

 今月3日から公開中の映画『THE FIRST SLAM DUNK』が、今、再び話題を集めている。というのも、公開前は詳細がほとんど明かされなかった本作だが、映画の制作過程をまとめた特別本『THE FIRST SLAM DUNK re:SOURCE』の発売(12月15日)が公式に発表されたのだ。

 そのなかには、原作者・監督の井上雄彦氏がスタッフとのイメージ共有のために描いたイラストや文章のほか、宮城リョータの映画の物語の部分的下敷きとなった読切漫画『ピアス』(単行本未収録)も収録されているというから、ファンにとってはお宝本になること間違いなしだ。

 それを受け、今回は映画の主人公である宮城リョータに焦点を当てて、原作『SLAM DUNK』での活躍を紹介したいと思う。

※以下には、コミック『SLAM DUNK』の一部内容が含まれています。ストーリーを解説するのが本記事の主目的ではありませんが、気になる方はご注意ください。

 

■ミスマッチを逆に利用

 宮城といえば、その特徴としてまず思い浮かぶのは小柄な体格だろう。作中でもよく「チビ」と揶揄されているが、たしかに身長168センチと、バスケットプレイヤーとしてはかなり小さい。

 この身長でのハンデを補う宮城の武器は、ずばりスピードと判断力だ。小柄さを活かしたすばしっこいプレイはもちろんのこと、オフェンスの起点であるガードとして正確で素早い判断を重ね、“湘北の司令塔”の役割をきっちりとこなしている。

 そんな宮城の判断力がとくに光ったのが、翔陽高校との試合である。

 ほぼ全員が190センチ超えという、県内一の高さを誇る翔陽。小柄な宮城は観客からも「ミスマッチ」を指摘されていたが、事実、相手のパスは簡単に宮城の上を通ってしまっていた。

 しかし、宮城は相手の高さに対し次々とスピードプレイで圧倒していく。大好きなマネージャー・彩子の声援に思わずデレデレとよそ見をする様子を見せるも、わずかな瞬間に宮城は赤木へパス。そして、すぐさま赤木を盾にしディフェンスを交わしてシュート……と見せかけ、高さ自慢の翔陽ディフェンス二人を飛ばせたところで、その下をくぐり抜け、ゴール裏からレイアップを決める。

 プレイの鮮やかさもさることながら、「ミスマッチ」を逆手にとった冷静な判断だ。

 またこの直後、宮城は翔陽ベンチにいる選手兼監督の藤真健司に指差しで挑発をしている。陵南高校・田岡監督も指摘しているように、藤真をベンチに残した状態は翔陽に余力を残させているということになる。宮城もそれを読んだうえで藤真の危機感を煽り、早めに引っ張り出そうという意図もあったのだろう。

■瞬時に相手を分析する判断力

 その藤真と宮城との1対1の局面。自身との身長差を計算に入れ、パスは出さず勝負してくると踏んだ宮城の読みが当たり、藤真がシュートの態勢に入る。すかさずジャンプする宮城だが、あっさりとシュートを打たれてしまう。藤真は178センチ、これくらいの身長差なら宮城は止められるはずだった。

 しかし驚くべきは、このたった一度の攻撃だけで宮城が藤真の特徴をつかんだことだ。「ボールを手放すのが早い…‼ ジャンプしながら最高点に達する前に放ってるかんじだ」「タイミングがあわせづらいな…しかもサウスポー…」と、極めて冷静に分析を重ねる。

 藤真がボールを持ってからシュートするまで、おそらく数秒。そのわずかな時間でここまでの分析をするのだから、一試合のなかでいったいどれほどのことを考え、どれだけの量の判断を下しているのやら……計り知れない。

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