冨樫義博氏による『HUNTER×HUNTER』は、1998年から『週刊少年ジャンプ』で連載されている人気作品。2022年10月24日に長かった休載期間が明け、喜びを噛みしめているファンも多いのではないだろうか。
本作はストーリーそのものが面白いのはもちろんのこと、あちこちに小ネタが散りばめられているのも見どころのひとつ。そのなかには、日常生活で役立つような豆知識や雑学が含まれていることもしばしばである。そこで今回は、そうした知識のうちとくに身近に感じたものを紹介していきたい。
■日常生活においても使われている「左回りの法則」
『HUNTER×HUNTER』に出てくる豆知識で代表的なものといえば、ファンのあいだで“クラピカ理論”と呼ばれることもある「左回りの法則」だろう。これは原作漫画第2巻に収録されている第16話「ハンター試験編」の途中で、クラピカが披露したものである。
トリックタワーと呼ばれる塔でおこなわれた三次試験にて、“制限時間72時間以内に生きて下まで降りてくること”というミッションを課された受験者たち。それぞれ選んだ“道”によって細かい試験内容は異なるが、ゴンとキルア、クラピカ、レオリオ、トンパの5名は、ゴールまでの道のりを多数決で乗り越えるルートをとらされる。
序盤で左右どちらの道に進むかの選択肢が出されたとき、レオリオは「左じゃねーとなんか落ち着かねーんだよ」と左を選ぶ。それに対し、クラピカは“人は無意識のうちに左周りに行動するケースが多いらしい”という行動学的豆知識を披露。だからこそ裏をかいて右の道を選ぶべきだと主張した。
この“左回りの法則”は日常生活においても身近なもので、スーパーやコンビニをはじめとしたお店では、左回りの動線になるようレイアウトされていることもあるのだとか。逆に、お化け屋敷など“気持ち悪さ”や“違和感”を出したい場合、右回りを取り入れる例もあるそうだ。
■実は不平等かも…「多数決のトリック」
彼らがトリックタワーを進んでいく道中では、ほかにも日常生活でタメになる知識が登場する。なかでも個人的に印象に残ったのが、「多数決のトリック」の話。
彼らは前述のシーンで右の道に進んだのちに試験官と戦うことになるのだが、その途中、とある対戦相手にとどめを刺すかどうかで意見が割れる。そこでレオリオは挙手性で多数決をとるのだが、自分だけ意見が違い、孤立してしまったことで完全に拗ねてしまった。
それを見たトンパはほくそ笑み、“多数決のトリック”についてモノローグで語る。彼が言うには、多数決は結局のところ少数派を抹殺する制度にほかならないとのこと。何度も少数派になってしまった人間は、疎外感や不満、怒りを感じ、その結果対立が生まれてグループは崩壊することになる、と。
レオリオはまさにそんな罠にハマっていた。自身の合格に興味はなく、ほかの人間の足を引っ張ることにすべてを懸けている“新人つぶし”の異名を持つトンパとしては、願ったり叶ったりというわけだ。
またトンパは、多数決における最大の愚行として“挙手”を挙げている。誰が自分に反対なのか目に見えるうえ、結局意見が押さえつけられるという状況は、少数派にとって屈辱的でしかない。その先に待っているのは、グループの決裂のみである。
……一見便利で平等と思ってしまいがちな多数決だが、今後はその不平等さについても頭の隅に置いておこうと思わされた豆知識だった。