■キン肉族の思いを受け継ぐ“相手を活かす”最終奥義「マッスル・スパーク」

 最後に紹介するのは、キン肉大神殿の「フィニッシュ・ホールドの壁画」に描かれたキン肉族三大奥義の1つ「マッスル・スパーク」だ。

 まずは、ブリッジの反動で相手を上空に跳ね飛ばし、空中で相手の両腕を逆さに掴み、相手の左足を左足で、相手の首を右足でそれぞれ極める。これが通称「マッスル・スパーク・天」だ。

 そして、相手と背中合わせに上に乗り、相手の両腕を両手で、相手の両足を両足で固定して、そのままマットに叩きつけフィニッシュする。これが通称「マッスル・スパーク・地」だ。

 王位争奪編で、キン肉マンはこの2つを融合する形で1つの技として完成させ、キン肉マンスーパー・フェニックスとの激闘に終止符を打った。「長かった戦いよさらば!」というセリフとともに放たれた「マッスル・スパーク」は、キン肉マンのそれまでの戦いの集大成であり、そのすさまじい威力と同時に技の構成も難解で作中でも最高難易度を誇る、まさに最終奥義と言っても差し支えないだろう。

 その後キン肉マンは、倒れたスーパー・フェニックスを抱きかかえ「許すことなど何もない」と和解し、そこで物語はひとまず幕を閉じることになる。

 だが、後に開幕した新シリーズでの完璧超人始祖編で、「マッスル・スパーク」はキン肉族の祖先であり正義超人の開祖でもあるシルバーマンが考案した「アロガント・スパーク」の改良型であることが判明する。そのあまりの破壊力から「相手を必ず殺す」、文字通りの必殺技であった「アロガント・スパーク」を「相手を活かす」技になるようシルバーマンは研究を重ねたが、実現することができず、自分の子孫に思いを託すため「フィニッシュ・ホールドの壁画」として残したものだったのだ。

 そうした由来も踏まえた上で、キン肉マンとスーパー・フェニックスとの対決を振り返ってみると、ただ“カッコよくて強い”必殺技というだけでなく技に受け継がれた思いが感じられて、その決着もより味わい深いものになるだろう。ちなみに、技を決めた時の相手の体勢が「マッスル・スパーク・天」では「K」を、「マッスル・スパーク・地」では「N」をそれぞれ表しており、キン肉族の王位継承者の証である「KIN」のマークを思わせるものとなっていて、その意味でもキン肉族を象徴する必殺技である。

 まだまだ魅力的な技はたくさんあるのだが、ロビンマスクの「ロビン・スペシャル」や、スカーフェイスの「アルティメット・スカー・バスター」などなど、挙げていくとキリがなくなってしまうため、今回は泣く泣く3つに絞らせてもらった。

 きっと読者ひとりひとりに、思い入れのある必殺技があることだろう。原作漫画の単行本とともに『図鑑 キン肉マン「技」』のページをめくって必殺技の数々や名シーンを復習してみれば、超人たちのアツいバトルに胸を躍らせていたあの頃の記憶も甦ってくるかもしれない。

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