■心の裏にある怒りを出すため、あえて表情と違う芝居を当てた

『魔術士オーフェンはぐれ旅 キムラック編』第6話より、クオ (C)秋田禎信・草河遊也・TOブックス/魔術士オーフェンはぐれ旅製作委員会

――アフレコは少人数ごとに別録りされたとお聞きしています。森久保さんとはご一緒になられたのでしょうか?

杉田 何回か。最終回は僕のほうからお願いして、一緒に録らせていただきました。やっぱり最後の激突は合わせて収録したかったんで。

――アフレコはどのような雰囲気でしたか?

杉田 あまりむだ口は聞かないですよ。いつもおもしろいことを現場でしていると思われているのであれば、偏見なので改めてほしいなと思います(笑)。一緒に録っていたのは主にアザリー役の日笠陽子さんですけど、まじめに録っていました。みなさんが思うようなバラエティ要素はないのが申しわけないです。若い頃「まじめに録ってます」って答えていたら「つまらない」と言われたものだから、じゃあ、もうエピソード勝手に作るかって(笑)。現場に変なものを買っていったりと意図的にやっていたのですが、そのうちばかばかしくなってきたのでやめました。アフレコ現場というものは案外地味なものなんです。

 ただ、今回、同じスタジオの別階で『ドラゴン、家を買う』の収録がされていたんですよね。朝、フロアを間違えてそっちの現場に行ってしまって、笑われました。「あら、杉田さん(笑)」って。「いや、あの、ドラゴン出たいです!」って言ったら、「ダメです!」って言われて。「子安(武人)さんは出てるでしょう?」「ダメです!」って。これぐらいです。すみません、もう許してください。

――ありがとうございます(笑)。では、杉田さんが演じるクオについて。キムラック教会<死の教師>の1人ですが、どういうアプローチをされましたか?

杉田 基本、教団に身を置く人って、教祖の思想に従って考えが統一されていくものだと思うんです。でも、クオも含めて「死の教師」たちからは野心を感じて、信用ならない連中だなっていうのがありますね。教会の暗殺者というだけでも異質なのに、加えてこの顔ぶれかって。

 クオは、自分では感情や本音が表に出ていないと思っているのに、わりと出てしまっている。そんな男だと思います。というのも、しゃべっていないとき、クオがどこを見ているのかをチェックしていたんです。むだかなと思いましたけど、けっこう表情が違うところがあって、やっぱり意味はありましたね。

 これ、普通の芝居だと間違っているんですが、心の裏にある怒りを出すために、テストであえて表情と違う芝居を当ててみたりしたんです。今回は絵が完成している状態でのアフレコでしたので、そういった芝居ができてすごくありがたかったですね。クオに込めたテーマは、彼が秘めている野心。それが合っていたかどうかは、あとはオンエアを見て判断いただければ。

(C)秋田禎信・草河遊也・TOブックス/魔術士オーフェンはぐれ旅製作委員会

――この先、いよいよクオが本格的に動き出します。エピソードの見どころはどんなところになりますか?

杉田 僕はあくまでもいち演者ですし、視聴者の目線を奪うような発言は控えたいんですが、あえて言うなら、オーフェンの生き様の格好よさ、でしょうか。清濁を受け入れて強くなる姿が洗練されて見える人って少ないんです。多くは成長しているように見えて実は最初から完成されているか、そもそも成長という概念そのものがない世界か、役割に対してそれをまっとうするだけかになりがちなんですよね。オーフェンは違う。魔術が使えなくなったオーフェンがどう立ち直っていくのか。彼の生き様と、オーフェンを表現する森久保さんの声の力にも注目してください。

(C)秋田禎信・草河遊也・TOブックス/魔術士オーフェンはぐれ旅製作委員会

  1. 1
  2. 2
  3. 3