驚異的な致死率の疫病の感染拡大を防止するため、政府は「封鎖」の処置を採った。やがてワクチンが作られ疫病は沈静化していく。ところが、それでもなお政府はこの処置を続けたため、慢性的な物資不足と経済恐慌が発生。やがて反発した市民は暴徒化し、極めて不安定な情勢に陥っていった……。
世界中で猛威を振るい続ける『新型コロナウイルス』。学校の休校、外出自粛要請と、まだまだ先行き不透明かつ不安な日々が続く中、すべての人が、一日でも早く収束することを期待していることでしょう。しかし、すべてが収束した後、いわゆる「アフターコロナ」には何が待っているのか。以前と変わらない日常は戻ってくるのか。それとも……。そんなアフターコロナのひとつの可能性となってしまうかもしれない世界が描かれた漫画を今回紹介します。
それが、架空の島国を舞台に繰り広げられる、政府と市民の争いを描いた軍記漫画『GROUNDLESS』(影待蛍太・著/双葉社刊)。
<『GROUNDLESS』あらすじ>
島国・アリストリアでは、致死率の高い疫病が蔓延。アリストリアの母体である大陸政府は、疫病を封じ込めるために都市封鎖の処置を施したが、疫病が沈静化してもなお政府は封鎖を解くことはなかった。
やがて食糧不足、物資不足を余儀なくされた市民の一部が、「アリストリア開放市民軍」を名乗る民兵組織と化し、暴動や略奪を繰り返すようになっていった。
アリストリア中部の街・ダシアで、武器商人の妻として、夫と娘とともに穏やかな毎日を過ごしていたはずのソフィアもまた、市民軍側の謀略に巻き込まれ、愛する家族、そして自らの左眼を失ってしまう。
一方、治安維持のため、政府側の兵士として慣れないながらも市民軍鎮圧の最前線に立っているのは、それぞれの街の自警団。そんな中のひとつ「ダシア自警団」に、ソフィアは入団を志願する。「狙撃兵」としてーー。
そこに描かれるのは、正義と悪の戦いではなく、すべてが自分にとっての正義を最優先した戦い。ある者は平穏だった日々を取り戻すため、ある者は愛する人を守るため、ある者は私利私欲のため、ある者は己のプライドのため、ある者は崇高だと信じる思想のため、そしてある者はただ生き抜くため、互いに銃口を向け合う。
ときには一般市民をも巻き込む市街地での戦い、ときには穀物倉庫接収のための夜を徹した戦いなど、さまざまな戦いの場面で、登場人物それぞれの人間ドラマ、生々しい戦闘シーン、臨場感あふれる戦時下の街並み、そのすべてを緻密かつリアルに描き、まさに読む者の心の奥をえぐる群像軍記漫画です。