■理不尽なことをやるくらいなら、俳優を辞めてやろうと思っています

 本作のオファーを受けたときには驚きましたが、プライベートでは子どもがもう3歳。もしかしたら「パパが出てる!」みたいに思ってくれるかな……なんて気持ちもあって、やらせていただくことにしました。

 仮面ライダーといえば永遠のヒーロー。今回の作品は“父と子”がテーマの一つになっていますが、自分の子ども世代が一番最初にそれを理解して楽しんでくれるのは、親としてもうれしいことですね。

 結婚する前なら、オファーを引き受けてなかったかもしれません。以前は、特撮作品には普通の俳優業とは、またちょっと違う価値観を求められるイメージがありました。でも自分が父親になってみて、見る側の気持ちが分かるようになった。そして、自分が参加することで、少しでも作品の世界観を広げられたらいいなと思えるようになったんです。

 ただ、結婚して子どもができたから、今までの生き方を曲げて引き受けたわけではありません。むしろ、これまで生きてきて、やっとそれが見えたからこそ踏み出せたのかなと思います。僕は、なにか理不尽なことをやるくらいなら、いつでも俳優を辞めてやろうと思っています。自分を曲げてまで、おかしいと思うことをやるべきじゃない。実際「辞めます」と言って現場を去ったこともあります。それでも今まで俳優を続けられたのは、おそらくそこで“曲げなかった”からだと思うんです。

 大人になると「諦めることも大事」なんて言ったりするけど、諦めることは意外に簡単です。楽にもなれます。でも僕は、そこで諦めて楽になったとしても、のちのち諦めたことがストレスになってしまう日が来るんじゃないかと思うんですよ。

 長い目で見れば、実は今ここで諦めないほうが楽になれる。だから、本当に乗り越えられないと気づくまでは、諦めないほうが良い。そして、諦めないで乗り越えて、やり切った先には、絶対に“何か”があるはずなんですよ。

やまもと・こうじ
1976年、東京都生まれ。幼少期からモデル・俳優として活動。1993年、ドラマ『ひとつ屋根の下』(フジテレビ系)の好演で注目を集め、以降も映画やドラマ、舞台で活躍。代表作は、ドラマ『新選組!』『陽炎の辻~居眠り磐音 江戸双紙~』(NHK)、映画『それでも僕はやってない』など。2020年には、舞台『万葉集meetsミュージカル「令和にそよぐ風~若き歌詠みの物語~」』、『アナスタシア』への出演が決まっている。出演映画『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』は12月21日(土)より全国ロードショー。

メイク:西岡和彦(PARADISO)
衣裳:岡野友美

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