通算100作目となるNHK連続テレビ小説として高視聴率を記録している『なつぞら』。広瀬すず(21)演じる主人公・なつの活躍で日本のアニメーション草創期が注目を集める中、女性アニメーターの先駆者である奥山玲子さんが1980年に出版した児童書『おかしえんのごろんたん』が双葉社より39年ぶりに復刊となった。
1957年に東映動画(現・東映アニメーション)に入社し、1958年に日本初の本格的カラー長編アニメーション映画『白蛇伝』の動画を担当した奥山さん。その後は、1962年に『アラビアンナイト シンドバッドの冒険』で原画に昇格し、『長靴をはいた猫」(1969年)、『ながぐつ三銃士』(1972年)などを手がけ、1970年の『海底3万マイル』では共同作画監督を担当。1965年から1966年にかけて放送された「ハッスルパンチ』、1966年から1968年にかけて放送された『魔法使いサリー』では作画監督を歴任し、1975年の映画『アンデルセン童話 にんぎょ姫』では女性初の長編単独作画監督を務めた。また、東映動画の同僚であった高畑勲演出・監督作品では『太陽の王子 ホルスの大冒険』(1968年)の原画、『母をたずねて三千里』(1976年)の作画監督補佐、『火垂るの墓』(1988年)の原画を務めた。後年は東京デザイナー学院の講師など教育者としても活躍し、2007年にその生涯を閉じた。
今回、復刊となる『おかしえんのごろんたん』は、「おくやまれいこ」名義で、奥山さんが物語と絵の両方を手がけた唯一の児童書。柔らかい絵のタッチに誘われて展開するそのストーリーは、「お菓子が大好きな少女が家を飛び出し森に迷い込んだところ、そこにはお菓子やケーキが食べ放題という楽園があった。ところが……!!」というグリム童話を彷彿とさせるような面白くて少し怖い物語となっている。そして巻末には『なつぞら』ではアニメーション時代考証を担当している奥山さんの夫・小田部羊一さん(『アルプスの少女ハイジ』『母をたずねて三千里』キャラクターデザイン・作画監督)のインタビューも収録。「40年も前に書かれたこの物語を、今を生きる子供たちとその親御さんたちに楽しんでもらえたら、奥山もきっと喜んでくれるのではないかと思います」と語られている。
今回の39年ぶりの復刊にあたり、双葉社の担当編集者は、「本書の復刊が、奥山玲子さんをはじめ日本のアニメーション草創期の偉大なアニメーターの方々に注目が集まるきっかけになれば」とコメントしている。