■悪しき運命を消し飛ばす帝王の能力「キング・クリムゾン」

 第5部の舞台はイタリア。ギャング組織「パッショーネ」の頂点に君臨するボス、ディアボロが操る「キング・クリムゾン」は、その凶悪な能力で数々の犠牲者を出した。

 その基本能力は「わずかな時間を消し飛ばす」というもの。その消し飛ばされた時間の中ではディアボロの存在だけが消失し、一切の干渉を受けなくなる。

 そしてこの能力の真価は、もう1つの能力「エピタフ」とのコンビネーションで発揮される。

 「エピタフ」で数秒先の未来を予知し、自身に起こる悪い未来を「キング・クリムゾン」の力で消し飛ばすことで、あらゆる攻撃を回避するのである。能力を受けた者は消し飛ばされた間の記憶がないため、一瞬の混乱の後、ディアボロに急襲を受けることとなる。

 作中では多くの人物がこの能力の餌食となり、なにが起こったか理解できないまま一方的に命を奪われた。

 たとえ能力のからくりが分かったとしても、予兆なく発動する能力を察知し、対応するのは極めて困難だろう。防御と回避に特化すれば、まさに無敵といえるスタンドかもしれない。

■加速し続ける時間のなかで人間はあまりにも無力…「メイド・イン・ヘブン」

 第6部では、DIOの友人であったエンリコ・プッチ神父が登場。彼はDIOの遺志を受け継ぐことで、人智を超えた究極のスタンド「メイド・イン・ヘヴン」を発現させた。

 その能力とは「時間を加速させる」というもの。これにより、地球や月、宇宙全体の時間が凄まじい速度で加速。数時間が数分に、果ては数日が一瞬で経過するという、とんでもない事態を引き起こした。

 時間は加速するが、人間を含む生物の体感時間は変わらない。そのため、周囲の環境だけが猛スピードで変化し、建物は朽ち、食料は腐り、文明は崩壊していく。作中では世界各地でさまざまな異常事態が引き起こされ、巻き込まれた人々が傷つき、命を落としていた。

 この加速についていけるのは、本体であるプッチだけ。他の生物から見ればプッチが高速で移動し、攻撃を仕掛けてくるようにしか見えないのである。

 最も恐ろしいのは、この能力は時間そのものに干渉するため、前述した他の時間操作の能力すら短縮してしまう点だ。作中では、無敵を誇った承太郎の「スタープラチナ・ザ・ワールド」による時間停止能力をも凌駕し、ついに打ち破っている。

 時間が早く進む……シンプルに聞こえるが、その言葉の響き以上に、世界が壊れていく脅威と取り残された人間のちっぽけさを痛感させられた、シリーズ屈指のスタンド能力だ。

 

 時間の停止、巻き戻し、消去、加速と、『ジョジョの奇妙な冒険』には、さまざまな時間操作能力が登場する。いずれも作中において圧倒的な力を見せつけて物語を大きく動かし、多数の犠牲者を生み出す要因となった。

 この中で「最強」を選ぶとしたら、個人的には「世界(ザ・ワールド)」の能力にすら干渉できた「メイド・イン・ヘヴン」を推したいところだが、その一方で本体自身も時の加速の悪影響を受けたことを考えると、デメリットの少ない「世界(ザ・ワールド)」に軍配が上がるような気もする。

 対戦相手や発動するシチュエーション、そしてスタンド使い本人のフィジカルや精神力なども引っくるめて、さまざまな要素を考慮して「最強」を議論できる点こそが、『ジョジョ』の面白さであり、奥深さなのかもしれない。

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