今期一番ヤバいドラマ『Tシャツが乾くまで』、蒼井優と中島歩に情緒と平穏をぶっ壊された 【かんそうの週刊ドラマレビュー】の画像
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 人気ブロガーのかんそうさんが毎週1回『ふたまん+』にてお送りする、ドラマへの熱い“感想”。今回のテーマは、蒼井優さん、松山ケンイチさんをはじめとした俳優陣の圧巻の演技が大きな話題となっているTBS系ドラマ『Tシャツが乾くまで』。脚本家・生方美久さんが描く「静かな日常に潜む不穏」をかんそうさんはどう観ている?

 

 ドラマ『Tシャツが乾くまで』(TBS系)がヤバすぎる。

 第1話から第3話まで観て、俺の脳みそが完全にTシャツ化して乾ききらなくなってる。

 日常が静かにブッ壊れていくこの感覚、優しすぎてえぐくて、静かすぎて重くて、もうどうしようもない。生方美久の脚本が「説明なんてクソくらえ」みたいな態度で沈黙と間だけで殴ってくるし、視聴者を信用しすぎてて逆に怖い。事故も派手じゃなくて「あ、世界がポロッと崩れた」って感じで来るのが最悪に最高。

 そしてそれ以上に、メインを務める4人、さらにそれを取り巻く3人の俳優がとんでもない。

 まず蒼井優。咲子の演技がもはや神がかってる。事故後の夫への虚脱感と苛立ちを、透明感の中に細かく織り交ぜた表情の変化が凄まじいってレベルじゃない。日常の動作一つ一つに意味を持たせて、ただ座ってるだけで緊張感を生み出してくる。

 第3話でサービスエリアに行ってカレーパンに落ち込む瞬間、俺は画面の前で「蒼井優! なんだその顔!! 心臓のドキドキ止まんねぇ!!!」って叫んだ。好きな人フィルターを掃除しなきゃいけないのは俺のほうだった。

 松山ケンイチの充もヤバい。無自覚な人たらしっぷりが秀逸すぎて、夫婦の甘い日常が妙にリアルかつ不穏。嫌いになる前に自分から離れるって信条が、第3話の「ごめんね」一発で全部ひっくり返す。優しいのに逃げてる男の顔が、画面に映ってなくても存在感を爆上げしてる。Tシャツが乾く前に消えてく男。

 そして中島歩の樹生。低体温キャラの裏側に潜む狂気が最高に気持ち悪い(褒め言葉の極み)。声の質と喋り方が絶妙すぎて、言葉がじわじわ脳みそに染み込んでくる。第1話の「好きな人フィルターでしたっけ? 掃除したほうがいいんじゃないですか」で全部ひっくり返した瞬間、俺は笑い死にかけた。

 第2話でシャンプーの匂いを嗅がれて「やっぱりィ………シャンプーなに使ってますゥ…………?」とか言っちゃうところがもうヤバイ。妻亡くしたばっかで不倫疑惑相手の妻に顔埋められて、そんなタイミングでシャンプー聞くな! でもそれが樹生なんだよな。第3話で亡き妻宛の荷物開けて迷子の子どもみたいに泣くところとか、低体温の皮を剥いたら中身が全部感情でグチャグチャになってて、俺は泣きながら「中島歩の顔を世界遺産にしろ!」って叫んでた。

 夏帆のあずさも最高。天真爛漫さの裏に欲望が渦巻いてる雰囲気がエグい。断片しか映らないのに「この人、絶対何かヤバいこと考えてる」ってオーラが全開。まだまだ開いてない引き出しがありそうで、俺はこのドラマの中で一番怖い。

 高橋文哉の直人は低体温男子の完成形。ドライで人と深く関わらないのに、店への忠誠心だけ異常に熱くて、咲子と樹生が一緒にいるのを知った時の複雑な顔が「俺もなんか言いてぇ……でも言わねぇ……」って感じで最高に痛い。無言電話の件とか、完全に知ってる側の余裕が怖い。

 リリー・フランキーの宮内は、独特の空気感で周囲を困惑させる古書店店主。物語に妙な深みを足してくる。あずさの「ねえねえ店長、夫に言えない話聞いて」って口癖を樹生にいやらしく語るなど、軽やかに本質を突くセリフが重いテーマの中で息継ぎになってて神。

 さらに臼田あさ美の千鶴は、咲子が充の不倫疑惑を相談したら、あっさり「私、不倫してる」ってカミングアウトしてくるとんでもない女。しかも年下の既婚者で「妻公認」とか言い出すし!

 清々しいくらいの開き直り具合がヤバすぎて、重い本編の空気を一瞬で「えっ、そっちも不倫かよ!」ってブチ壊してくる。冷静に年下の腕の中に収まる姿とか、リングした薬指をチラつかせる演出とか、完全に「不倫の先輩」ポジションで登場してるのに、憎めない。物語に絶妙な毒を注入してくる。

 Tシャツが乾くまでの時間みたいに、じわじわ心が煮詰まっていくこの感じが本当にたまらない。優しいのにえぐく、静かなのに重い。このバランスを最後まで保てれば間違いなく名作。今期ドラマの中で一番「続きが気になって仕方ない」作品になった。

 俺の脳みそはもう乾かない。

 

■著者プロフィール
かんそう
ドラマを愛するブロガー・ライター・作家。北海道の片隅で意味不明な文章を綴る長男。
著書に『書けないんじゃない、考えてないだけ。』『推すな、横に並んで歩け』がある。

 

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