物語に登場する悪役は、ときに主役以上に魅力的だ。主人公の前に立ちはだかり、恐怖や絶望を与えながらも、なぜか目を離せない……。その存在感ゆえに、作品を見終えたあとも強く記憶に残るのは、むしろ悪役のほうだったという経験を持つ人も少なくないだろう。
なかでも、漫画やアニメを原作とする作品に登場する「美しき悪女」たちは、実写化において特に難易度の高い存在だ。妖艶さと恐ろしさ、支配者の風格と人を惹きつけるカリスマ性。その独特なバランスを、生身の俳優が違和感なく成立させ、なおかつ原作ファンのイメージにも応えなければならないからである。
今回は、実写化作品で「美しすぎる悪女」を見事に演じ切り、その妖しさと説得力で観客を魅了した女優たちを振り返っていく。彼女たちはどのようにしてキャラクターの持つ毒気と色香をまとい、忘れがたい“ハマり役”となったのか。その鮮烈な悪女ぶりを、改めて見ていきたい。
(第4回/全5回)
※本記事には作品の内容を含みます
■色気と愛嬌を兼ね備えた悪の女王…『ヤッターマン』ドロンジョ:深田恭子
タツノコプロの人気アニメ『タイムボカンシリーズ ヤッターマン』は、正義の味方・ヤッターマンと、悪党トリオ「ドロンボー一味」の攻防を描いた昭和を代表する国民的人気作だ。
コミカルなギャグと奇想天外なメカバトルで親しまれてきた本作は、2009年に三池崇史監督の手によって実写映画化。櫻井翔さんがヤッターマン1号/高田ガン役、福田沙紀さんがヤッターマン2号/上成愛役を務め、生瀬勝久さんがボヤッキー役、ケンドーコバヤシさんがトンズラー役を演じた。
そしてその実写版『ヤッターマン』で、主人公たちの宿敵にして、ドロンボー一味を率いる女王的存在・ドロンジョを演じたのが深田恭子さんである。
ドロンジョといえば、アニメ史に残る悪女キャラクターの1人として有名だ。抜群のスタイルと色気を備えながら、部下のボヤッキーとトンズラーを振り回す女王様然とした存在であり、最後には毎回のように悪の親玉・ドクロベエの「おしおきだべぇ」を受ける。
そのセクシーさとコミカルさが同居したキャラクター性は、いかにも“アニメ的”であり、実写化のハードルは決して低くなかった。
当時の深田さんといえば、『下妻物語』(2004年)の竜ヶ崎桃子役や『富豪刑事』シリーズ(2005年〜)の神戸美和子役など、華やかさや愛嬌を持つ役柄の印象が強かった。そんな彼女にとって、ドロンジョは方向性の異なる難役だったはずだ。しかし深田さんは、その強烈なキャラクター性を驚くほど自然に自分のものにしてみせた。
深田さん自身も衣装の細部に意見を出し、ドロンジョらしさを損なうことなく、それでいて実写ならではの表現を追求したという。黒いマスクに、身体のラインを強調したボンデージ風の衣装。本革を用いた豪華でセクシーなコスチュームは、アニメの誇張されたデザインを現実へ落とし込みながらも、強い説得力を生み出していた。
そして、深田さん版ドロンジョの魅力は、単なる“セクシーな悪女”に終わらない点にある。作中では、気絶したヤッターマン1号と偶然キスを交わしたことをきっかけに、思いがけず恋心を抱くことに。これは原作アニメ後半で描かれた、ドロンジョが1号に淡い想いを寄せる展開を踏襲したものだ。
普段は部下を従える女王様気質の悪女でありながら、恋に戸惑い、思わず少女のような表情をのぞかせる。そのギャップが加わったことで、ドロンジョは単なる悪役ではない、不思議な愛嬌と人間味を持つ存在として描かれていた。
美しさで目を引き、悪女らしいカリスマで場を支配しながら、ときに恋する乙女の顔ものぞかせる。深田さんのドロンジョは、『ヤッターマン』という作品だからこそ成立した、“愛される悪女”の理想形だったと言えるだろう。
■深田恭子さんの魅力が光る『ヤッターマン』をPrime Videoでチェック



