物語に登場する悪役は、ときに主役以上に魅力的だ。主人公の前に立ちはだかり、恐怖や絶望を与えながらも、なぜか目を離せない……。その存在感ゆえに、作品を見終えたあとも強く記憶に残るのは、むしろ悪役のほうだったという経験を持つ人も少なくないだろう。
なかでも、漫画やアニメを原作とする作品に登場する「美しき悪女」たちは、実写化において特に難易度の高い存在だ。妖艶さと恐ろしさ、支配者の風格と人を惹きつけるカリスマ性。その独特なバランスを、生身の俳優が違和感なく成立させ、なおかつ原作ファンのイメージにも応えなければならないからである。
今回は、実写化作品で「美しすぎる悪女」を見事に演じ切り、その妖しさと説得力で観客を魅了した女優たちを振り返っていく。彼女たちはどのようにしてキャラクターの持つ毒気と色香をまとい、忘れがたい“ハマり役”となったのか。その鮮烈な悪女ぶりを、改めて見ていきたい。
(第3回/全5回)
※本記事には作品の内容を含みます
■妖しさと執着をまとった悪女妖怪…『xxxHOLiC』女郎蜘蛛:吉岡里帆
女性漫画家集団・CLAMPによる漫画『xxxHOLiC』は、人の“願い”を代償と引き換えに叶える“ミセ”を営む女主人・壱原侑子と、アヤカシを引き寄せる体質を持つ高校生・四月一日君尋の周囲で起こる怪異や人間の欲望を描いた人気作だ。
本作は、2022年に蜷川実花監督の手によって実写映画化された。この映画『ホリック xxxHOLiC』で、主人公・四月一日(神木隆之介さん)らを惑わせる妖艶な妖怪、女郎蜘蛛を演じたのが吉岡里帆さんである。
原作でも高い人気を誇る女郎蜘蛛は、金髪が印象的な美しい妖怪だ。実写版では、原作のゴスロリ調のイメージにボンデージのテイストが加えられ、蜷川監督ならではの極彩色の世界観にも自然に溶け込んでいた。
普段は可愛らしい印象の吉岡さんだが、本作ではその可憐さにセクシーさと悪魔的な魅力を同居。人を惹きつけながらもどこか危うい、妖怪らしい魔性を体現していた。そのビジュアルだけでも十分に強烈だが、女郎蜘蛛の本質は「欲しいものは絶対に欲しい」と、狙った獲物を執拗に追い詰める危険な執着心にある。
作中の彼女は、四月一日の心の隙や欲望を見抜き、甘い言葉で巧みに揺さぶりながら、ゆるやかに逃げ場を奪っていく。大胆なセクシーポーズや四月一日とのキスシーンなども用意されており、その密着度の高さと妖しい色気は強烈だった。視線や声色、仕草の端々に危うさを宿らせることで、人を惹きつけながら破滅へ導く女郎蜘蛛ならではの魔性を見事に表現していた。
この難役に挑むにあたり、吉岡さんは徹底した役作りを行ったという。当時のインタビューでは、露出の多い衣装に合わせて腹筋を重点的に鍛え、“肉感的すぎず、華奢すぎず”という絶妙なバランスを意識したことを明かしている。
さらに、ポールダンスなどで活動するKUMIさんから“セクシーな所作”の指導を受け、首の角度や指先の動き、歩き方まで細かく作り込み、妖怪らしい色香が漂う身体表現を追求。そうした努力の積み重ねが、女郎蜘蛛の危険な魅力に確かな説得力を与えていた。
衣装の力、徹底した肉体作り、そして専門家の指導によって磨き上げられた身体表現。吉岡さんが演じた女郎蜘蛛は、「美しすぎる悪女」というテーマにふさわしい存在感を放っていた。人を惹きつけ、甘く惑わせながら破滅へ導く……その危険な色香こそ、女郎蜘蛛最大の魅力だったと言えるだろう。
■吉岡里帆さんの妖艶な女郎蜘蛛が凄い… 『xxxHOLiC』をPrime Videoでチェック



