■試合の流れを呼び込むディフェンスリーダー
ディフェンスは個人の技術だけで成立するものではなく、チーム全体を機能させて初めて効果を発揮する。その意味で欠かせないのが、確かな守備力と戦術眼でチームをまとめる「ディフェンスリーダー」の存在だ。
まず外せないのが、「ディフェンスに定評のある池上」で知られる、陵南高校の池上亮二である。体格の割には繊細なキャプテン・魚住純、そして2年生中心の若いチームにディフェンス面で安定感をもたらした。
山王工業のポイントガード・深津一成も忘れてはならない存在だ。絶対王者の司令塔として2年からスタメンを務め、堂本監督からの信頼も厚い。堅実な守備に加え、ときには流れを断ち切るために、あえてラフプレーも選択する冷徹さを備えている。
そしてこのカテゴリーの代表格といえば、海南大附属高校の絶対的エース・牧紳一だろう。強靭なフィジカルとリーダーシップを兼ね備え、オフェンスのみならずディフェンスでもチームを牽引した。
湘北戦の立ち上がりでは流川、三井のシュートを立て続けに防ぎ、さらに桜木のダンクをあえてファウルで止める。牧のディフェンスは、終始相手に主導権を渡さないことに徹底していたように思う。
そして、その真価が発揮されたのが陵南戦だ。試合の後半、終了間際のプレーでのこと。ファウルを誘って勝負を決めにきた仙道彰に対し、牧は瞬時にその狙いを見抜き、あえて得点を許すことで延長戦へと持ち込み、最終的な勝利を手繰り寄せた。
単なる個人技にとどまらず、相手の勢いを削ぎ、試合の流れそのものを掌握する。牧のディフェンスは、まさに「勝つために守る」を体現していた。
こうして振り返ると、『SLAM DUNK』には、実に多彩なディフェンダーたちが登場していたことにあらためて気づかされる。
では「最強のディフェンダー」とは誰なのか。圧倒的な個人技なら沢北栄治、完成度の高さなら河田雅史、組織を束ねる力なら牧紳一が筆頭に挙がるだろう。
しかし、桜木花道が見せたポテンシャルと急成長は、それらに勝るとも劣らない衝撃を残した。結局のところ「最強」の答えは一つに定まらず、それぞれが異なる形で「最強」を体現していたのだ。あなたなら、誰を最高のディフェンダーに挙げるだろうか。