■蘭は新出先生と結婚!?
コナンの悲惨な状態は、どんどん悪化していく。園子が明かした衝撃の事実とは、蘭がプロポーズを受け入れようとしていることだった。しかも、その相手は帝丹高校の校医でもある医師・新出智明と聞き、コナンは驚愕する。ずっと新一のことを待っていたが、それにも限界が来てしまったというのは無理もない話だ。その相手が新出先生というのも、妙に生々しい人選だった。
蘭が自身の想いに決着をつけるため「新一との思い出の場所」にいると聞き、コナンはあちこち探し回る。そして、最終的にたどり着いたのは新一の自宅だった。そこでコナンは自身の正体を明かし、「結婚するな!!」と蘭に告げる。
しかし、「高校生になったら、ホントそっくりになったね」と蘭は本気で取り合ってくれない。一応「10年、待ったんだもん。もう10年は待ってもいいよね」とプロポーズを断る展開にはなったが、目の前にいるコナンを新一だとは思っていないという、もどかしい展開が描かれる。「これが最終回だったら最悪だ……」と感じるような結末に、ゾッとしてしまった。
■まさかの夢落ち!?最後はハッピーエンドへ
しかし、そこで唐突にコナンは倒れてしまい、次に飛び起きたときにはすぐそばに子どもの姿の灰原がいた。彼女は、熱があまりにも高すぎたためにコナンが意識不明でずっとうなされており、解毒剤の効果もいつもより早く切れてしまったと話すのだった。
すべては高熱が見せた幻覚だった。事実を知って安心するコナンだったが、彼の不安は残されたままになる。しかし、毛利探偵事務所にはコナンの体調を気遣って、仲間たちが集まっていた。彼らのあたたかさでコナンの不安も消えていくというハッピーエンドが描かれている。
この『10年後の異邦人』は、まさかの夢落ちならぬ「幻覚オチ」で終わる。ファンとしてはほっとするが、その後味の悪さはいつまでも残ってしまった。
このエピソードでは幻覚だったとはいえ、劇場版第5弾『名探偵コナン 天国へのカウントダウン』で描かれた10年後の少年探偵団や園子の姿が踏襲されている点も見逃せない。また、その時は描かれなかった蘭の10年後の姿を見ることができたのは嬉しいポイントだ。
「今回ばかりはコナンに戻ってよかったけど……」というコナンのセリフは、この作品を観た視聴者全員の気持ちを表しているのかもしれない。
IFストーリーとはいえ、かなりの後味の悪さがある『名探偵コナン 10年後の異邦人』。ある意味では、現在も続く原作はこうした結末ではないということも意味しているのではないだろうか。
コナンにとって最悪の結末を映像化したこちらの作品、『名探偵コナン』ファンであれば一度は見てみるべき怪作であることは間違いない。