■あと一歩届かなかったチャンピオンベルト!『はじめの一歩』幕之内一歩vs伊達英二
森川ジョージ氏のボクシング漫画『はじめの一歩』では、主人公・幕之内一歩が日本フェザー級王者・伊達英二とのタイトルマッチで惜しくも敗れている。
A級ボクサー賞金トーナメント決勝戦で最強の敵であるヴォルグ・ザンギエフに苦戦しながらも勝利し、伊達とのタイトルマッチに臨んだ一歩。
若さとタフネスさで勢いを付ける一歩に対し、伊達は巧みに主導権を握っていった。破壊力抜群の一歩のパンチ力に対し、伊達はパンチが当たった瞬間に首をひねって威力を流す「スリッピング・アウェー」を披露する。
とはいえ、以前にスパーリングで対決したときはボコボコにやられていた一歩だが、ここではしっかりと伊達を苦しめる戦いぶりを見せている。だが、第4ラウンドを終えた時点で一歩は目も腫れてもはや意識が飛びそうな状態。それほどまでに伊達の強さが際立っていたのだ。
しかし、一歩が得意とするボディ攻撃がかなり効いており、第5ラウンドに入ると伊達も腹にパンチがかすめるだけで悶絶するほど。一体どちらが勝つのだろうかと思っていたのだが、思わず大振りになった一歩に対し、伊達が渾身のハートブレイクショットを浴びせる。
これは威力の強いコークスクリュー・ブローを相手の心臓目掛けて放ち、その強打で一瞬心臓を停止させ動きを止めるという伊達の必殺技。
これが一歩に命中して動きが止まってしまい、ここでタオルが投入されて伊達の勝利となった。もう手に汗握る展開にドキドキしっぱなしで、当時は早くマガジンで続きが読みたくてたまらなかった。
それまで無敗だった一歩だけに、ここも勝利するのだろうと思っていたのだが、まさか敗戦するとは思わなかった。強打を誇る一歩が戦ってきた相手の中で、いまだダウンを取れなかったのは伊達くらいのものだ。
試合に臨む覚悟の差を痛感した一歩は、復帰してデンプシー・ロールを身に着けるほどさらに成長しており、ライバル千堂武士との対決を制して日本チャンピオンになっていく姿にまた興奮してしまった。
スポーツ漫画の主人公たちは、白熱した「“負け”名試合」を経ることで急激に成長を遂げていく。今回紹介した名勝負の展開には、一体どちらが勝つのだろうとハラハラドキドキさせられたものである。