宮崎駿のMV作品に押井守監督のドタバタコメディも! 配信なし…見たいけど見るのが困難な90年代名作アニメ3選の画像
『御先祖様万々歳!』DVD第1巻

 各クール数十本の新作が作られるアニメ大豊作の時代だが、ここ10年で大きく変わったのは視聴方法だろう。レンタルビデオ店は閉店が相次ぎ、作品を配信で見ることが現代のスタンダードとなった。

 しかしこれまでに作られた作品全てが見られるというわけでは当然なく、配信では見られないアニメが存在する。今回紹介するのは1990年代に制作された配信もなく、視聴することが困難なアニメ作品だ。

 現代のデジタルで仕上げられたアニメも年々ハイクオリティになっていて素晴らしいものも多い。だが、90年代のアナログの質感が残るアニメには魅力がある。今回紹介するのはいずれも、今のアニメに見慣れた人にも見てほしい作品ばかり。古臭く感じるかもしれないが、新しい発見があるはずだ。

■押井守監督によるOVA『御先祖様万々歳!』

 まず最初に紹介する押井守監督による『御先祖様万々歳!』は1989年から1990年にかけて発表されたOVA作品。配信されておらず、現在視聴するのは困難な作品となっている。

 押井守氏といえば『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』などで知られ、映画『花束みたいな恋をした』では「神」として登場した名匠だ。観念的、哲学的な長い台詞回し、現実と虚構をテーマにした一見難解なストーリーなど、他押井作品と同じく、『御先祖様万々歳!』も例に漏れず監督の強い作家性が全面に出た作品だ。

 ストーリーとしては、マンションに暮らしている平凡な家庭に美少女が突然やってくる、ドタバタコメディだが、小劇場での舞台演劇のような演出を採用しているのが特徴で、押井監督は「舞台が好きだという以上に、台詞だけで成立するアニメーションを作ってみたいという思いがあったから」とインタビューで語っている。

 筆者の個人的なオススメポイントとしては、声優を務めた山寺宏一さんと鷲尾真知子さんによるデュエットソング「興信所は愛を信じない」などの劇中歌や毎話素晴らしい、鳥肌が立つようなEDへの入り。一流アニメーターがそろったことによるアニメーションのクオリティの高さなどだ。

 個人的には押井守監督作品でもトップクラスに好きな作品なので、気軽に見れる環境にないことが残念でならない一作だ。

■東映動画制作版『遊☆戯☆王』

「遊戯王って普通に配信にもあるし、見られるよ」と思った人もいるかもしれない。だが、一般的に知られているのは今回紹介するものではなく、2000年から放送となったテレビ東京版『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』である。

 なぜ同じタイトルで2作あるのかと言うと、アニメの権利が「テレビ朝日」から「テレビ東京」に移ったためであり、視聴困難なのもこれが原因と言われている。現在、この1998年に全27話で放送された東映版『遊☆戯☆王』は配信はもちろん、DVD化もされておらず、視聴するためにはVHSを探して見るしかないという状況になってしまっている。

 内容としては、原作漫画の学園編からTRPG編をなぞりながらオリジナルエピソードや改変を加えたもの。

 大きな改変としては遊戯の人格が一つであること、表現がマイルドになっていることなどがあるが、野坂ミホ(CV:ゆかな)のレギュラー化が最も大きな変更点だろう。原作ではほとんど出番がなかったキャラクターをレギュラー化させる、という現代であれば炎上しかねない90年代的な改変がたまらない。

 筆者は、まだレンタルビデオ店が健在だった時代に、『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』との区別がつかず借りてしまい、面白くて最後まで見てしまった思い出がある。遊戯の声優が碇シンジを思わせる緒方恵美さんであることや、FIELD OF VIEWによるOP「渇いた叫び」など90年代っぽさに溢れるこの作品が好きだった。現在のような配信時代とはまた違った、アニメ作品との出会い方ではないだろうか。

 今若い人が見ても面白いと自信を持って推したい同作。是非配信して見やすくなって欲しい。

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