名実ともに“白い悪魔”に…『機動戦士ガンダム』覚醒後アムロが見せた化け物じみた戦闘シーンの画像
『アムロ・レイ×ぴあ』(ぴあMOOK)

 最初はガンダムの性能に頼っていたアムロが、物語が進むにつれて、ガンダムを使いこなしていく。主人公アムロ・レイの成長物語は『機動戦士ガンダム』の見どころの一つだ。しかし、後半になるに連れて、アムロは最終的には成長どころではない、敵幹部たちも恐れをなす、化け物じみた戦闘をするようになっていく。そんな化け物じみたアムロの戦闘シーンを改めて振り返りたい。

■12機のドムが3分で全滅、コンスコン艦隊戦

 コンスコン艦隊は、最新鋭のリック・ドム12機で構成されている部隊。しかも美しいフォーメーションで連携がとれており、その様子から精鋭部隊であることが見受けられる。また旗艦についても、ムサイよりも火力が高い重巡洋艦・チベである。質も量もトップクラスの艦隊である。

 そんな艦隊を、ホワイトベース隊は3分で倒してしまった。ホワイトベース隊は量産性度外視の試作型モビルスーツの艦隊とはいえ、『機動戦士ガンダム』作中の1話の時点で製造されていた機体がほとんど。そして、機体数もモビルスーツと戦闘機合わせて5機と、リック・ドム12機と比べると半数以下である。

 アムロが撃墜したのは、その中の9機のリックドムと旗艦・チベ。アムロについて、『ガンダム』作中ではこう呼ばれたことはなかったが、目の前で対峙したジオンパイロットから見れば、まさに「白い悪魔」のような恐ろしい強さだろう。

 宇宙攻撃軍総司令官のドズル中将は、大火力の大型モビルアーマーであるビグ・ザム1機よりもリック・ドム10機が欲しいと漏らしている。それを超える12機が3分で消え失せたのは、大局的に見てもジオンにとって大きな痛手となっただろうことは想像に難くない。

■ガンダムの性能がネックになったシャリア・ブル戦

 シャリア・ブルの乗るブラウ・ブロは、ニュータイプ専用モビルアーマーだ。一年戦争時のニュータイプ専用モビルアーマーとしては「エルメス」が有名だが、ブラウ・ブロは、その有線式バージョンのような機体である。

 よって、ステルス性は劣るものの、長射程のオールレンジ攻撃が可能となっている。その威力は、当たっただけでガンキャノンの両足を吹き飛ばすほどだ。

 テレビシリーズ第39話で登場したシャリア・ブルは、中年の木星帰りのニュータイプという珍しい人物。しかし、一度会っただけでララァ・スンの素質に気づくなどの敏感さを見せており、ニュータイプ能力が極端に劣っているわけではなさそうである。年齢相応の経験の豊富さを加味すると、かなり強力なパイロットであったことが推測される。

 そんなシャリア・ブルが乗るブラウ・ブロを、辛勝とはいえ撃墜したのが、覚醒後のアムロである。もっと性能の良いモビルスーツに搭乗していれば、あっさり勝利できたかもしれない。シャリア・ブル戦で足を引っ張ったのは、ガンダムの性能だからだ。

 シャリア・ブル戦の決め手となったのは、ブラウ・ブロに急接近して放ったビーム・ライフルの一撃だった。だが急接近する際に、ガンダムがオーバーヒートしたため、結果的にギリギリの戦いとなった。

 最新鋭かつ画期的なモビルアーマーであるブラウ・ブロの弱点を見抜き、ガンダムをオーバーヒートさせるほどに限界まで性能を引き出した一戦。まさに化け物じみたアムロの才能が、これでもかと表現された戦闘シーンであった。

■自動操縦でシャアを撃墜したジオング戦

 最後は、一年戦争の最終戦、ア・バオア・クー攻略戦での、アムロのガンダム対シャアのジオングの一戦。アニメ『機動戦士ガンダム』としても最終戦となり、ニュータイプとしては最盛期であったアムロの戦いだ。

 ジオングは、腕部の有線サイコミュで大出力のメガ粒子砲をオールレンジ攻撃で打てる。大推力のスラスターによりマッハ9の最高速度を出せる、かなりの高性能モビルスーツだ。

 しかしアムロとの戦闘では、そもそもガンダムに攻撃が当たらない。通常のパイロットどころか、ベテランパイロットでも計13門のメガ粒子砲による弾幕を避けるのは至難の業だろう。そういった弾幕を、アムロは避けつつ戦った。それどころか、弾幕のわずかな隙間を縫って、直線に近い軌道でジオングに肉薄するのだ。これは覚醒後アムロにしかできない、化け物じみた戦闘であろう。

 またア・バオア・クー内での、ガンダムとジオングの最後の打ち合い。ラストシューティングとして名高い名シーンでも、アムロの化け物っぷりが発揮されている。

 有名なこのシーンのガンダムは、実は自動操縦で動いているのだ。アムロは、シャアの行動を予測できていたということになる。

 そのうえで、学習型コンピュータが優秀とはいえ、シャアが襲ってくる地点までガンダムを移動させ、ジオングヘッドを打ち抜くには、ある程度の手動設定も必要であろう。そういった設定を、戦場で素早く行えることから、プログラミングの腕前も優秀であることが分かる。そういった様々な要素が合わさり、ジオング戦は特に化け物じみたことをやっている印象を受ける。

 ホワイトベース隊が、大局的には戦局に影響を与えていないという説がある。だが常識的に考えた場合、どの戦闘でもジオン軍の方に利があるのは明白である。序盤のエースパイロット撃破なども含め、こういった活躍を考えると、その説が怪しくなるほど、アムロ個人が化け物じみているのを、ひしひしと感じる。