作る前に誰か止めろ!『ガンダム』シリーズの「乗ると死ぬ」悪魔のモビルスーツ3選の画像
バンダイのプラモデル「HGUC ブルーディスティニー1号機 “EXAM” 1/144」

 1979年のテレビアニメ『機動戦士ガンダム』の放送開始以来、現在まで数多くの作品が作られてきた『ガンダム』シリーズ。宇宙戦争を背景にした人間ドラマが描かれる中で、各陣営の最新技術が注ぎ込まれたMS(モビルスーツ)が数多く登場するが、中には「乗れば無事には帰れない」……そんな機体が何体か存在する。

 安定感のある量産型のMSとは違い、試験的なMSはその性能と引き換えにパイロットに
とんでもない負担を強いるこれらの機体。そんな諸刃の危うさに魅力を感じるというファンも少なくないのではないか。

■「殺人的な加速だ!」がすべてを表すトールギスとかいう欠陥モビルスーツ

 まずは「乗ると死ぬ機体」の代名詞的な存在ともなっている「トールギス」。『新機動戦記ガンダムW』に登場した機体で、作中では秘密結社・OZのエースパイロットであるゼクス・マーキスの手足となり活躍した。

 そんなトールギスは『ガンダムW』世界では最初期に開発されたMSで、その思想は「考え得る全ての戦闘パターンにおいて、単機でも完璧な勝利を可能にする」という、なんともスーパーなもの。

 一見すると不可能に思えるコンセプトだが、後にガンダムを作った開発者たちによってカンペキに再現され、トールギスが生まれたのだ。

 だが作中でも指摘されたように、トールギスはあまりにも性能が高すぎた。重装甲と、そのせいで増えた機体重量を高速で動かす機動力を両立したために、バーニアの起動時にはパイロットに15G以上もの負荷がかかってしまう。

 ちなみにどれほど訓練して装備を万全にしても、人間では10Gの負荷に耐えるのが限界と言われているようで、15Gもの負荷のもとではパイロットは文字通りぺしゃんこになってしまうはず。そんな代物を「殺人的な加速だ!」で済ませたゼクスはとんでもない頑丈さなのかもしれない。

 マッハ2を誇る機動性の高い空戦用MS「エアリーズ」より遥かに速いとも言われており、そもそも加速で死なずとも、その速さに反応できるパイロットがいるかどうかは疑問だ。

 いろいろな意味で欠陥だらけの最強MS、それがトールギスだ。

■パイロットなしで動けよ…と言いたくなるブルーディスティニー1号機

 続いては隠れた名作ガンダムゲームと言われる『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』から「ブルーディスティニー1号機」を紹介したい。

 これは真っ青に塗られたカラーリングが特徴のMSで、ジムの頭部からあまり強くはなさそうなイメージを与える機体だが、宇宙世紀でも屈指の恐るべき機能である“対ニュータイプ殲滅システム”と呼ばれる「EXAMシステム」を備えている。

 このシステムはニュータイプの脳波を感知することで発動する機能で、相手の殲滅を最優先し、パイロットの制御を無視した行動を開始する。

 だがこのシステムは、そのあまりの殺意の高さゆえか、パイロットを完全な部品として扱っている節がある。そのため、MSの重要部位の損傷を回避した結果、コックピットに攻撃が直撃しパイロットが死亡するケースもあったとか。

 また戦場で多くの人間の死や殺気を感知することでシステムが発動し暴走することがあり、こうなると周囲を敵・味方問わず無差別に攻撃しだす。パイロットどころか、味方すら危険に晒す悪夢のMSなのだ。

「乗りたくない」「一緒に戦いたくない」そんなMSの筆頭のようなブルーディスティニー1号機だが、実はシステムには14歳のニュータイプ少女、マリオン・ウェルチの精神パターンがコピーされているというエグイ設定もある。テレビシリーズではけっして放送できないような、なんとも恐ろしすぎる背景を持つ機体だ。

■パイロットも部品の一部?呪われたGUNDフォーマット搭載のMSたち

 最後はシリーズ最新作である『機動戦士ガンダム 水星の魔女』に登場する「GUNDフォーマット」を搭載した、「ガンダム」と呼ばれるMSたちだ。

 作中でも「ガンダムの呪い」と言われ、実際に主人公のスレッタ・マーキュリーやエラン4号は命の危険を感じながらの操縦をしており、ソフィ・プロネに至っては死亡している。

 人間と義肢を繋ぎ、自分の身体のように動かすという、もともとは医療用に開発されたGUND技術。作中ではMSの操縦に転用しており、操縦技術が拙くともある程度の力が発揮できるような「初心者救済」的な側面を持つシステムとして描かれていた。

 だがGUNDフォーマット搭載機は、その力を解放するために「パーメットスコア」と呼ばれる人体との接続レベルを段階的に上げていく必要があり、そのたびにパイロットにとんでもない情報量を流し込んでしまう。その結果、パイロットの身体は負荷に耐え切れずに光の痣を浮かび上がらせ、最終的に脳が耐えきれずにソフィのように亡くなってしまう。

 作中ではGUNDビットによるオールレンジ攻撃も駆使して圧倒的な強さを発揮したガンダムたちだが、実は熟練パイロットであれば普通に渡り合えている。そうしたパイロットを上回るにはパーメットスコアを引き上げる必要があるが、そうするとパイロットは死亡してしまう。

 つまり、ソフィのように使い捨てのパイロットを運用するのが前提の、なんとも悪趣味なシステムなのだ。

 作中での活躍、きらきら光るGUNDビットなど、ヒロイックなデザインで人気が高い『水星の魔女』のガンダムだが、設定だけを見ればシリーズでも屈指の胸糞機体と言えるだろう。

 以上、乗ると死んでしまう、パイロット無視の恐ろしいMSを紹介していった。他にもパイロットの四肢切断が搭乗条件となっている『機動戦士ガンダム サンダーボルト』の「サイコ・ザク」や、見た目通りあまりにも弱い「ボール」、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の阿頼耶識システム搭載機など、ガンダムシリーズにはパイロットに優しくない機体が多数登場してきた。これらの背景を想像しながら見ると、さらに本編のキャラの気持ちに共感して苦しくなりそうだ。