ガンダム、型式番号「RX-78-2」といえば、白をベースに赤・青・黄のトリコロールカラーがカッコいい機体だ。しかしよくよく見てみると、顔の赤いアゴや腰の黄色いボックス、シールドの十字など「このパーツはいったい何のためにあるのだろう?」と疑問に思ったことはないだろうか。
「RX-78-2」は、モビルスーツ開発においてジオン軍に後れをとっていた地球連邦軍が、一発逆転を図って作り上げた試作機のひとつだ。よって、あらゆる新技術がこの1機に惜しげもなく投入されている。見た目もカッコいいが、それ以上に機能満載の機体なのだ。
そこで今回は、ガンダム「RX-78-2」の謎パーツについて、見ただけでは分からないその機能や役割を解説していく。
■赤いアゴ
まずは赤いアゴ……色のせいで突き出した舌のようにも見えるパーツについて。
『GUNDAM ARCHIVE(ガンダム アーカイヴ) 機動戦士ガンダム/完全設定資料集』によると、この部分は「聴音器(マツムS-4)」と表記されている。マツムは正式名称「マツム・ソニック」で、連邦軍のMSのモニターや通信装置を開発・製造する会社のことだ。「オプチカルシーカー」とも呼ばれるこのパーツは、分かりやすく言うと、ガンダムの「耳」のような役割を果たしている。
ご存知のように宇宙世紀作品では、ミノフスキー粒子という広範囲で電波障害を起こす粒子が存在している。よって遠距離同士でミサイルを撃ち合うような戦闘が不可能で、人間がパイロットとしてMSに乗り込み、基本的には有視界内で戦わなくてはならない。同時期の連邦軍MSであるガンキャノン、ガンタンク、ジムには赤いアゴが無いのだが、おそらく、目の部分にあるカメラをメインに使って戦闘をおこなっていたのであろう。
試作機であるガンダムはカメラに加え、赤いアゴという補助的なセンサーを導入することで、索敵や照準の精度を高めようとする試みがあったと思われる。ちなみに、Zガンダムこそ赤くないが、後の機体ZZガンダムやジェガンにも同様の赤いアゴが見られる。ガンダムの戦闘データによって、アゴの有用性が証明されたのかもしれない。
■腰の黄色いボックス
次に注目したいのが、腰の前後に2つずつ、計4つある黄色いボックス状のパーツ。お弁当箱のようにも見えるが、もちろん遠征用の食料タンクなどではない。
先ほどと同じ資料集によるとこれは「ヘリウム コントロール・コア」という部分で、ジェネレーター出力を強化するための補助システムとのことだ。
ガンダムをはじめとする宇宙世紀のMSや戦艦の多くは、動力源として核融合炉を使うことで、高出力かつ長時間の戦闘を可能にしている。その核融合にはヘリウム3という物質が必要なのだが、ガンダムは、腰の黄色いボックスパーツ「ヘリウム コントロール・コア」でヘリウム3を制御することで、出力をアップさせていると思われる。
ジムと比較すると分かりやすく、ジムの腰部分には同様のパーツが見当たらない。ガンダムがジムより高出力なのは、このパーツの影響もあるのだろう。
一応補足すると、単純にこの出力だけをとってジムがガンダムより運動性が劣っているということではない。ジムは見ての通り、ガンダムよりあきらかにパーツが少ない機体だ。軽量化によりガンダムより早く動けるという見方もある。高出力だが重いガンダムと、低出力だが軽いジム、それぞれにメリットがあるようだ。
■シールドの黄色い十字
最後に、シールドにある黄色い十字の機能について解説していく。
ここまで紹介してきた機体性能にかかわるパーツと少し意味合いが異なり、黄色い十字には「敵味方識別」という標識のような役割があると思われる。シールドに地球連邦軍を象徴するマークをつけることで、敵味方にかかわらず連邦軍所属の機体だと知らせているのだろう。
大河ドラマなどで見たことがあるかもしれないが、実際の戦にも旗印というものがあり、これもまた敵味方の識別に使われていた。そのほかにも自軍の「士気高揚」の役割を果たしていたそうだ。たしかに、この黄色い十字付きのシールドを持つガンダムの勇姿を、自軍として戦場で目撃したら否が応でもテンションが上がってしまう気がする。
また、同時期の量産機ジムや『機動戦士Zガンダム』で登場する後の連邦軍の量産機ハイザックのシールドにも、連邦軍所属を表す同様の黄色い十字マークがついている。一方、興味深いことにガンダムMk-IIのシールドにはこの十字マークが付いていない。一応、ガンダムMk-IIも連邦軍所属のはずなのだが、それ以上に「ティターンズ」を象徴する機体だったからなのかもしれない。
今回は、ガンダム「RX-78-2」の謎パーツということで、その機能を解説してきた。
ガンダムには、このように見ただけでは用途が分からないようなパーツ1つ1つに細かい設定がある。もちろん、ほかのMSやMAにもそれぞれ設定があり、アニメ本編ではほとんど触れられることがないMSやMAを開発する企業、さらには、開発の歴史などもしっかり練られているのだ。
このような緻密な設定が説得力のある世界観の構築につながっており、ガンダムシリーズの大きな魅力の1つとなっている。