ビスケット・オリバに超合金クロビカリ…筋肉が暴走して骨折も! バトル漫画「筋肉キャラ」の規格外すぎるエピソード3選の画像
『バキ』完全版 第12巻(秋田書店)

 バトル漫画に「筋肉」の描写は必要不可欠な要素だろう。筋肉が大きくなればなるほど、破壊力は跳ね上がり、相手の攻撃をものともしない防御力にも直結する。しかし筋肉を大きくすれば良いというものでもないようで、たとえば『ドラゴンボール』では、超サイヤ人の限界を超えたと自負するトランクスが筋力特化した姿を見せたものの、スピードがまったく出せずにセルに翻弄されるという場面もあった。

 このように、筋肉の強化にはメリットとデメリットがあるが、己の肉体を純粋に信じ、「筋肉こそ全てだ!」というキャラクターは単純明快で、特に少年漫画の場合は読者人気も高いことが多い。そこで、今回は名作バトル漫画の中から、筋肉を鍛えすぎて規格外のエピソードを生み出してしまった「筋肉キャラ」を何人か紹介していきたいと思う。

■筋肉が異常発達する特異体質

 2023年7月からNetflixでアニメ第2期後編の配信がスタートした、原作・梅村真也氏、構成・フクイタクミ氏、作画・アジチカ氏による『終末のワルキューレ』に登場する最強の力士・雷電為右衛門は、作中でも屈指の筋肉キャラだ。

 江戸時代に実在した雷電は、生まれながらに筋肉が異常に発達する特異体質「暴れ筋肉」の持ち主。筋肉が成長を続けることで、それを支える骨が耐えられなくなってしまい、そのため雷電は2歳8ヶ月まで立つことができず、立てるようになった瞬間に全身の骨が砕けてしまった。それから雷電は懸命に努力を重ねて、一度骨を砕くことで筋肉を押さえつける「百閉」と呼ばれる新たな筋肉を身につける。

 筋肉を押さえつけているとはいえ、雷電の力は並の人間のモノではない。5歳のときに年上の男の子に相撲を挑むと、最初のぶつかり合いだけで相手を軽々と吹き飛ばしてしまう。他の子どもたちからは怪物扱いされ恐れられながらも、母親の教え通り心優しく育っていく。しかし、火山の噴火で故郷が大飢饉となったことをきっかけに江戸へ出て、自らの肉体を活かせる相撲で金を稼ぐことを志す。あまりの強さゆえに自身が得意とする鉄砲、張り手、鯖折り、閂の4つの技を禁止しつつも、実に勝率9割6分を超える戦績を上げた、まさに“化け物”級の伝説の力士となった雷電は、作中の「ラグナロク」でも人類最強の筋肉を持つ闘士として並外れた力を振るい破壊神シヴァと死闘を繰り広げた。

■筋肉が技術を超越

 板垣恵介氏による『グラップラー刃牙』シリーズ(秋田書店)には、鎧のような筋肉を身につけたキャラクターが多数登場する。それはまさに筋肉の宝庫と言っていいほど。そして、筋肉だけでなく格闘の技術が加わることで戦いの展開も大きく変化する。純粋な力が強いのか、技術がそれを凌駕するのか、というせめぎ合いこそが作品を通じたテーマでもあり、個性を伸ばしてそれぞれが発揮する「強さ」の形も見どころの1つである。

 そんな中でも「筋肉こそ全て!」というキャラクターがビスケット・オリバだ。オリバは刑務所に収監された囚人にもかかわらず自由に出入りできる立場を得ており、「ミスターアンチェイン」という異名を持つ。そして、刑務所内でもトレーニングを欠かさない。しかも普通のトレーニングではなく、ヘリコプターと力比べなど常人には不可能なものばかりだ。

 警察に協力して凶悪な犯罪者を捕らえる役割も担っていて、オリバの筋肉があるからこそ解決につながっていた。相手がショットガンを発射しても筋肉の壁が弾丸を阻み、日本刀で斬りつけられてもプレートの入った心臓部で受け止め反撃するなど、まさしく規格外。しかもその時に受けた傷は、夕食で大量に肉を摂取しただけで回復し始めていたのも驚きだった。

 中国大擂台賽編では、自らの肉体はダイヤモンドと豪語する揚海王を力だけで押しつぶし、伝説とされる龍書文に技術の差を見せつけられても、これまたねじ伏せて勝ってしまう。刃牙との戦いでは、「パックマン」なる絶対的防御を初披露。座って丸まることで巨大な筋肉の球体となったオリバに対して、刃牙は剛体術を叩き込むが、取り込まれて筋肉の圧力によって潰されてしまう。相手の技術を純粋に筋肉の力だけで叩き潰してしまうオリバの真骨頂と言えるだろう。

■筋肉で上り詰めたS級の地位『ワンパンマン』超合金クロビカリ

 原作:ONE氏、作画:村田雄介氏による『ワンパンマン』(集英社)にも、面白いキャラクターが多数登場する。ヒーローと怪人の戦いをテーマにした作品であるがゆえに、それぞれが持つ個性や能力が重要になってくる。ヒーローはC級からS級までのランキング形式となっていて、わずかな例外を除けば努力なしではS級まで到達することはできない。

 S級ヒーローの1人が超合金クロビカリで、元々はひ弱な少年だったが、両親から誕生日にもらった3キロのダンベルを皮切りにトレーニングを開始して、数年後には片手で50キロを持てるようになる。さらにトレーニングを続けて、200キロ、500キロ、1トン、2トンと持ち上げられるようになり、比例して筋肉も増大していく。そして、C級からスタートしてついにS級ヒーロー11位という地位にまで上り詰めた。

 ヒーローの中にはもちろん筋肉を売りにしている者が数名いるが、クロビカリを上回る筋肉量を持つ者はいない。実際、その1人であるS級ヒーロー「ぷりぷりプリズナー」から打撃を受けても、クロビカリは全くの無傷だ。他にも、寄生型の怪人が鋼鉄の強度を誇るドリルで攻撃するもいとも簡単に跳ね返されたり、昆虫怪人の蟲神はジャブ一発で爆散されたりと、その筋肉の鎧の強度は群を抜いている。

 そんな、作中でも屈指の強さを持つはずのクロビカリが、どうしてS級で11位なのか? と思う人もいるはずだ。その理由はというと、あまりに自分の体を鍛えるのに夢中になりすぎて、ヒーロー協会への貢献度が低いからだとされている。

 筋肉キャラは己の肉体に絶対の自信を持ち、また自分の筋肉を愛しすぎるくらい愛していることがほとんどで、そこから生まれる常識ばなれした規格外のエピソードも面白さの源になっている。見れば誰でも「こいつは強い!」とひと目でわかるキャラクターでもあり、だからこそ、その作品における「強さ」のバロメーターとしても機能するのだ。