漫画やアニメには決めセリフや名セリフが多く登場する。我々はときにその言葉に笑い、時に元気づけられ、そのキャラクターの言葉をお守りのように大切に心に刻んでいる人もいるだろう。
また、「このキャラといえばこのセリフ」というキャラづけのセリフも少なくない。しかし中には、ネット上では有名なのに「実はそのセリフは原作には存在しない」というものも存在する。これまで常識だと思っていたものはあなたの勘違いかも?
まずは青山剛昌氏による推理漫画『名探偵コナン』に登場する、工藤新一のライバルで西の高校生探偵・服部平次のセリフ。服部といえば関西弁を扱うキャラクターで、江戸川コナンの正体が新一であることを知っているため、彼のことを「工藤」と呼ぶ。
2人がヒソヒソと推理について議論を交わす様子はよく見られるが、ネット上でよく見られる「せやかて工藤」という言葉は一度も発していない。標準語で「そうは言っても」にあたる「せやかて」は服部が使いそうな関西弁ではあるが、そのイメージで広まってしまったのだろう。
ネットではネタ的に使われているセリフだが、公式にも使われており、2017年の映画『名探偵コナン から紅の恋歌(からくれないのラブレター)』公開時にプレゼント企画として「せやかて工藤!!」ツイッターキャンペーンが行われたこともあった。公式にも認められた珍しいネットミームと言えるだろう。ちなみに「せやかて工藤」とは微妙に違う、「せやけど工藤」というセリフは原作に一度だけ登場している。
主題歌「ようこそジャパリパークへ」がクセになる電波ソングとして話題を集めた、動物を擬人化したアニメ『けものフレンズ』にも「実はない」セリフはある。
それは「すっごーい! 君は○○のフレンズなんだね!」というもの。主人公のサーバルが前向きな性格で「すごーい!」「たのしー!」と目の前の全てを肯定するのでこの言葉が有名となったが、このセリフもアニメにはないもので、いつの間にかファンの間で使われるようになったネットミームなのだ。相手を褒めるときや逆に皮肉を言うときに使うが、作品の世界観を実によく表しているフレーズだろう。
美内すずえ氏の名作漫画『ガラスの仮面』では、作品を象徴する“インパクト大”のあのシーンが実は存在しない。
主人公の北島マヤの師匠である月影千草といえば、マヤの才能を目の前にして「おそろしい子!」と顔面を真っ白にして白目の状態で驚くというイメージがあるが、こんなシーンも存在しない。
漫画では「おそろしい子!」というセリフ自体は登場しているものの、このときの月影先生はマヤの潜在能力を目にして、大きく高笑い。さすがは月影先生、マヤの才能に出会って演劇人としての喜びに打ち震えているのだ。またライバルである姫川亜弓が「やはりおそろしいひと」とつぶやく場面があるものの、こちらも白目ではなく微笑みを浮かべたコマとなっている。なお、顔面蒼白の白目シーンは原作漫画では限りなくネガティブなシーンの表現として登場している。
有名なのに実は存在しないセリフの数々。ネットミームが一人歩きしてしまっている印象はあるが、ここまで世の中に浸透しているのはある意味すごいかも!?