『Dr.STONE』『ガラスの仮面』『のだめカンタービレ』天才キャラも実は影で…天才たちの熱い努力シーンの画像
KC KISS『のだめカンタービレ 新装版』第1巻(講談社)

「天才とは1%のひらめきと99%の努力である」とは、「発明王」の異名を持つトーマス・エジソンが言ったとされる名言だ。その言葉の真意は「『1%のひらめきがなければ99%の努力は無駄になる』ということである」という説もあるが、いずれにしても世の中で偉業を達成した人物の話を聞く限りでも、努力は必要不可欠なものだと納得してしまう。

 漫画やアニメにおいても、一般人の常識をはるかに凌駕する、なんでもできてしまう天才キャラが多く登場する。一見苦労なくなんでもできてしまうように感じる天才キャラだが、周囲の人から見えないところでのたゆまぬ努力をしているシーンが描かれていると、少し彼らの中に人間味を感じて親近感を覚えるものだ。

 そこで今回は、読んでいるだけで心が熱くなる天才たちの努力シーンを紹介したい。

 まずは、『週刊少年ジャンプ』に連載されていた原作・稲垣理一郎さん、作画・Boichiさんによる『Dr.STONE』。ある日突然人類全員が謎の石化をした世界で、3700年後に目覚めた主人公の石神千空が仲間と共に文明を再興していくストーリーだ。

 千空は、石化後の世界で3700年以上も心の中で経過していく時間を数えて自意識を保ち続けた信じられない精神力の持ち主。目覚めてからも、持ち前の科学知識で金属を腐食させる作用がある石化からの「復活剤」としてのナイタール生成や肺炎を治すためのサルファ剤など、さまざまなものを作り上げてきた。

 クールで皮肉屋な性格に、ネガティブな部分を他人には決して見せない様子が、周囲の感じる彼の天才肌な性格を助長させている。

 しかしその根底にあるのは誰にも負けない科学への情熱。2話の時点で、「『科学ではわからないこともある』じゃねえ  わからねえことにルールを探す  そのクッソ地道な努力を 科学って呼んでるだけだ……!!」という名言が飛び出す。ナイタールを作るだけでも1年をかけて実験を繰り返していた千空。成功は、こうした地道な努力の先にしかないのだろう。

 また彼のいいところは、人の努力を決して笑わないところ。作中後半では千空を含めた全人類が石化してしまい、あるキャラクターだけが目覚めることとなったが、そのキャラが一人きりで数年かけて復活液を作った際には素直に称賛の言葉を送っていた。

 続いては、主演・上野樹里さんにて2023年秋にミュージカル作品の上演が予定されている、二ノ宮知子さんによるクラシック音楽をテーマとした『のだめカンタービレ』。

 主人公の野田恵(通称:のだめ)は耳が良く、一度聴いた曲は楽譜なしでもピアノで弾きこなしてしまう音楽の面での天才キャラクター。しかし生来のだらしない性格や、幼少期に受けたピアノ教室での指導がトラウマとなっており、音大に入学するまで正規のレッスンを受けてこず、即興の自己流作曲は得意だが楽譜を読むことは苦手という欠点がある。

 のだめはそれまでは自分の好きなようにピアノを弾いていたが、千秋真一との出会いによって、彼女の中にも上昇志向が芽生えていく。また上述した千秋もエリートキャラで、マルチリンガルかつ、指揮だけでなくピアノとヴァイオリンの演奏もプロ並だが、彼の努力をしているシーンは一層顕著だ。芸術家タイプには天才が多いように思われるが、彼らもまた日々弛まぬ努力を続けている。

■北島マヤの捨て身の特訓

 美内すずえさんによる『ガラスの仮面』の北島マヤも、女優として天賦の才を持ったキャラ。

 彼女は役柄を自分に憑依させるタイプの女優で、これまで演技を習っていたわけでもないのに、テレビなどで一度見た演技を完璧に記憶し、セリフや動きも覚えられる。まさに女優になるために生まれてきたような存在だ。

 マヤは演技への情熱が人一倍強いがゆえに、その努力の仕方も常軌を逸している。例えばヘレン・ケラーを演じる際にはその気持ちを理解するため、耳に粘土を詰め、目を包帯で覆い、感覚を遮断することで昼も夜もわからない生活を過ごしていた。「白い青春譜」の患者役を演じるときは実際にロープで足を縛るなど、まさに「恐ろしい子」としか形容できない捨て身の特訓をしている。

 キャラクターたちに共通しているのは、夢や目標のために決して諦めない心の持ち主であるところ。我々も、自分は天才ではないからとたかを括らず、天才の彼らであっても努力していることを胸に留めて頑張りたい。