アニメ版『北斗の拳』に登場した“オリジナル技”3選「南斗人間砲弾」に「南斗暗鐘拳」などちょっと笑えるヘンテコ技も…の画像
ゼノンコミックスDX『北斗の拳【究極版】』1巻(徳間書店)

 連載終了した今もなお、バトル漫画として根強い人気を誇る原作:武論尊氏、作画:原哲夫氏による『北斗の拳』。その高い人気から1984年にはテレビアニメ版が放送されたのだが、原作コミックスでは描かれなかったさまざまなオリジナル要素が登場した。今回は、なかでもアニメ版にのみ登場した数々の“技”について見ていこう。

■“南斗五車星”の面目躍如…風を友とする実力は伊達じゃあない!! 「五車風裂拳」

 ラオウ率いる“拳王軍”の侵攻に、“南斗最後の将”と呼ばれる謎の人物が立ちはだかるのだが、その将を守るために登場するのが「南斗五車星」という五人の実力者たちだ。

 漫画版にも登場した彼らだが、なかでもアニメ版で思わぬ活躍を見せたのは、“風”を操る拳士・ヒューイである。漫画版ではほかの“南斗五車星”の面々よりもいち早くラオウに勝負を挑んだものの、圧倒的な実力差から一瞬で敗北してしまった。

 しかし、アニメ版ではヒューイの出番が大幅に増え、ラオウと激突する前にケンシロウのもとへ辿り着き、その実力を確かめるために戦いを挑む……という活躍を見せている。その際、拳王侵攻隊の団長を相手にアニメオリジナルの“技”を繰り出したのだが、その技こそ、発生させた“風”によって触れずに相手を切り裂く「五車風裂拳」である。

 手刀や突きによって相手の体を切り裂く技が多い南斗流派だが、加えて“風”にまで切れ味を生み、離れた相手を攻撃できる非常に強力な技となっている。

 ヒューイはこの技を使い、相手の持っていた剣ごと触れることなく切断して見せた。漫画版では描かれなかった彼の拳士としての高い実力が、いかんなく発揮された瞬間である。

 アニメ版ではその後もケンシロウと拳を交え、その実力を認めるシーンが追加された。結果的には原作同様にラオウに敗北してしまうものの、“南斗五車星”という達人集団の一人であることがアニメ版ではより強調されている。

 自然現象すら武器としてしまうその技には、思わず活用法や威力を想像してしまう。まさに“風”の二つ名を持つことを納得させられてしまうアニメオリジナル技だ。

■本当に“拳法”!? サーカス団顔負けの奇襲戦法!「南斗人間砲弾」

 アニメ版の『北斗の拳』はオリジナル要素がかなり多かったのだが、なかでも視聴者の度肝を抜いたオリジナル技が「南斗人間砲弾」である。

 南斗聖拳の一派であるガレッキーが生み出した拳法であり、彼が率いる「ゴールドウルフ軍」の面々もこの技を使うことができる。

 拳法、技……とはいうものの、その内容はあまりにも破天荒極まりない。その内容は“人間砲弾”の名が表すように、人間を大砲の弾として発射し、上空から相手に向かって襲い掛かるというもの。

 その特性上、集団で使われることが多く、気球に乗った仲間と連携することで相手への的確な距離や発射角度などを割り出し、最適な射撃を実現することができる。

 相手の頭上から襲い掛かることから奇襲効果は抜群で、上空からの攻撃は対応が難しく非常に厄介だ。また、バリケードなども容易に突破できており、作中では守りを固めた村をいとも容易く制圧している。

 しかし、大砲を使って人間が飛んでくる姿は、拳法というよりもまさに“サーカス団”のそれで、その奇抜な戦法に当時の視聴者はおおいに驚かされた。

 珍妙な技ではあるが、使い手のガレッキーやその仲間たちはこの技を駆使し、大真面目に村の人々やケンシロウを襲っているのだから、実にシュールである。

 善戦こそしたものの、ケンシロウにとってはさほど問題にもならなかったようで、「北斗虚空斬」なる技で堂々と迎撃されてしまった。

 その圧倒的なインパクトから、アニメ版『北斗の拳』といえば必ずと言っていいほど話題に上がる技の一つとなっている。思わず「拳法とは……」ということを考えさせられてしまう、あまりにも型破りなオリジナル技だ。

■洗脳に死者蘇生まで…そのやりたい放題っぷりはもはや“呪術”…「南斗暗鐘拳」

 数々の摩訶不思議な能力を持つ“拳法”が登場するなかで、もはや“拳法”という枠を逸脱してしまった、あまりにもスピリチュアルな現象を引き起こす技も登場した。それこそが、KINGの部下であるザリアが用いた「南斗暗鐘拳」である。

 拳……と名前がついてはいるものの、その内容は格闘術というよりも“呪術”に近い。大聖堂にある“鐘”の音を聞かせることで対象を操作するのだが、誰かを催眠術にかけたり洗脳するといったことはお手の物。指の動きを見せることで金縛りをかけたり、果ては触れずに部下の体を真っ二つにするなど、超能力でも使っていなければ説明のつかない数々の現象を見せつけた。

 さらに極めつけは、なんと死んだ人間を蘇らせ、手駒として操ってしまう。首がない死体がふらふらと襲い掛かってくる姿はまさに“ゾンビ”……。数々の秘拳や奥義が登場する本作において、死者蘇生を成し遂げたのはこの「南斗暗鐘拳」が初めてではないだろうか。

 非常に強力な技ではあるものの、ケンシロウには効果がなく、おそらく術をかけるためにはなんらかの制約が存在すると考えられる。また、蘇った死体にも北斗神拳の“経絡秘孔”を用いた技は通用するため、ケンシロウは亡者すら、悪漢たち同様にあっさりと退けてしまった。

 とはいえ、街の住人たちだけでなく、仲間であるリンまでも催眠にかけて利用してしまうなど、一歩間違えればケンシロウですら突破することができなかったかもしれない、なんとも危険な技である。

 人間の意識を支配し、死者すら操って襲わせる……ほかの拳法とは一味も二味も違う、なんともオカルトめいた特徴を持つオリジナル技だ。

 

 漫画作品のアニメ化というと、アニメオリジナルの展開というのも一種の見どころではあるが、『北斗の拳』はとくにオリジナル要素が多く、原作を読破しているファンも楽しめる要素が満載だ。キャラクターたちの活躍はもちろんのこと、原作とアニメの違いに注目してみるのも面白いかもしれない。