普段とのギャップが強烈…ドラえもんが見せたジャイアン&スネ夫への“あまりにひどい仕打ち”3選「ジャイアン殺人事件」や「のろいのカメラ」でも…の画像
てんとう虫コミックス『ドラえもん』(小学館)第38巻

 1969年より連載が開始された藤子・F・不二雄氏の『ドラえもん』は、アニメや映画など、いまだなお幅広い展開を続ける国民的人気作品だ。

 冴えない小学生・のび太を助けるドラえもんは、普段はのんびり屋のマイペースなキャラクターだが、実は意外なことにのび太をいじめるジャイアンやスネ夫に対して、ときにひどい言葉を言ったり、きつい仕打ちを働く場面も登場する。

 そこで作中でドラえもんがいじめっ子らに見せた意外な一面と、そのエピソードについていくつか紹介していこう。

■ひどい歌声への最大級の皮肉…「ジャイアン殺人事件」

 ジャイアンと言えば、やはり最大の特徴は“ひどい歌唱力”ではないだろうか。作中でもことあるごとに「ジャイアンリサイタル」を催し、その音痴っぷりを発揮するジャイアンだが、そんな彼の歌唱に対して、ドラえもんのあまりにもきつい皮肉が飛び出したことがある。

 それが、コミックス39巻「ジャイアン殺人事件」でのこと。ある日、ドラえもんとのび太は散歩の途中、空き地で熱唱しているジャイアンの歌を聞くこととなってしまう。相変わらずの壮絶な歌声に、のび太は「ジャイアン本人はどうしてあのすさまじい歌にケロッとしていられるんだろ」と、ドラえもんに悶絶しながら問いかける。

 この問いに対し、ドラえもんもまた全身に汗をにじませながら「あたりまえだろ、フグが自分の毒で死ぬか!?」と言い放った。ジャイアンの歌を完全に「毒」と言い切ることで、歌の凶悪さをアピールしたなんとも皮肉極まりない一言である。

 ちなみに、このエピソードではそんなジャイアンの歌声がプロの歌手を育てるスクールの教頭に認められた(!?)ことで、とんだ珍騒動へと発展していく。普段のジャイアンの歌声を知っている読者としても、ドラえもんの苦悩にどこか共感してしまうエピソードであった。

■ジャイアンよりドラえもんのほうが過激!?「ドラえもんの歌」

 先述の通り「ジャイアン=音痴」という設定は作中においては有名だが、実はその設定が初めて登場したのが、藤子・F・不二雄大全集版『ドラえもん』1巻の「ドラえもんの歌」なるエピソードだという。

 ある日、のび太の家にやってきたジャイアンは「リサイタル」へとのび太を招待する。7コマに渡って響き渡るジャイアンの歌声に耐えるのび太を、なんとかひみつ道具で救出するドラえもん。すべてが終わり帰ろうとするその最中、本エピソード最大の「事件」が起こってしまう。

 突然、ドラえもんが「歌が歌いたくなった」と歌い始めるのだが、ジャイアンの歌を凌駕する下手っぷりで周囲を苦しめてしまうのだ……。ドラえもんは「きみなら芸術がわかるだろ」とジャイアンに歌声を聞かせるも、あまりの音痴っぷりに突き返されてしまう。

 これに激昂したドラえもんは、焦点の合わなくなった目のまま、怒りに任せてジャイアンをぎったぎたに叩きのめしてしまうのだ。さらに、ボロボロになったジャイアンを踏みつけながら、「芸術のわからんやつは人間じゃないっ」とまで言い放つ……。

 これは偶然にも「とあるもの」がドラえもんを故障させてしまった影響だったのだが、そのあまりの暴虐っぷりがまずかったのか、アニメ版などでは表現がマイルドに改変されていたようだ。ジャイアンの歌声よりも、ドラえもんの暴走っぷりがとにかく目に付いて仕方ない、壮絶なエピソードである。

■温厚なドラえもんが限界を迎えた瞬間?「のろいのカメラ」

 ジャイアンだけでなく、スネ夫にもなにかといじめを受けることが多いのび太だが、コミックス4巻「のろいのカメラ」ではそんなスネ夫に対し、ドラえもんが我慢の限界を迎えるシーンが描かれている。

 物語冒頭、いつものようにスネ夫にいじめられ、それを泣きながら報告するのび太。いつもなら、これを穏やかに慰めるドラえもんなのだが、今回ばかりは様子が違った。

 のび太の一言を聞くなりドラえもんは激昂。「あんちきしょう。きょうというきょうは」と怒りを露にし、「めっためたにしてやるぞっ」と、唖然とするのび太を置いて部屋を飛び出していってしまう。

 街を駆けながらもドラえもんは「のび太くんをばかにするということは、ぼくをばかにすることだ。ゆるせぬ!」と、まだ一度も使ったことのない「悪魔の発明」と言われる道具を凶悪な笑みを浮かべながら解禁する。

 そのひみつ道具こそ、タイトルにもなっている「のろいのカメラ」なのだが、なんと撮影した人物の人形を生成し、人形が受けた影響をそっくりそのまま、対象者に与えるというとんでもない代物だった。

 まさに「ハイテクな呪いの藁人形」とも言える道具だが、ひょんなことからスネ夫ではなく、ドラえもん自身がこのカメラに苦しめられることとなってしまう。ドラえもんの抱く激しい恨みや怒りが爆発した、珍しくもどこか恐ろしいエピソードだ。

 

 あるときはちょっとした皮肉を、あるときは耐えがたい怒りに突き動かされて……普段の優しい姿が印象的だからこそ、ドラえもんが時折見せる“ひどい仕打ち”には、なんとも強烈なギャップを感じてしまう。

 こうした『ドラえもん』の作中に登場する少しブラックな場面は、いまもなお読者の記憶に強烈なインパクトを与え、語り継がれている。