『変な絵』発売10日で20万部突破!話題席巻の覆面ホラー作家・雨穴氏が「本当にゾッとした」伝説の漫画作品とはの画像
雨穴氏
全ての写真を見る

 全身黒タイツに身を包み、真っ白いお面をかぶった不気味なスタイル。YouTuber兼ホラー作家として活躍する「雨穴(うけつ)」氏の新著『変な絵』(双葉社)が10月20日の発売後、わずか10日間で20万部を突破する異例の大ヒットを記録している。

 2021年に『変な家』で出版界にデビューした雨穴氏は、もともとはウェブライターとして「オモコロ」などのメディアで活動を開始。4年前からYouTubeに動画のアップをはじめ、11月4日現在登録者数71万人を超える人気チャンネルとなっている。

 だが動画では覆面にボイスチェンジャーを使用しており、その素性はいっさい謎。本名はもとより性別や国籍や年齢などいっさい明かされておらず、その不気味なスタイルが憶測に憶測を呼び、それがさらに注目される理由となっているようだ。

 今回の『変な絵』は、何かがおかしい9枚の奇妙な絵に秘められた謎を紐解くスケッチ・ミステリー。とあるブログに投稿された「風に立つ女の絵」、消えた男児が描いた「灰色に塗りつぶされたマンションの絵」、山奥で見つかった遺体が残した「震えた線で描かれた山並みの絵」……。これらが何を意味するのか。

 SNSなどでは早くも盛り上がりを見せているが、こうなるとますます作家本人の素性を知りたくなってしまう……。そこで今回、ふたまん+では雨穴氏にメールにてインタビューを敢行。ホラー作家になった経緯などプライベートな話については返答はなかったが、1点だけ「過去に読んで本気でゾッとしたホラー漫画を教えてください」という質問についてのみ回答があった。

■知る人ぞ知るホラー漫画家「袈裟丸周造」

 雨穴氏が語ってくれたのは、袈裟丸周造氏による『廃屋の住人』という漫画作品。2011年に『週刊ヤングジャンプ』で連載された漫画で、酔った勢いで“不気味な家”に忍び込んだ大学生・健太が不思議な体験をするという物語。そして健太の従姉・まどかの息子が、幼稚園で“謎の絵”を描いていることが分かり、思わぬ恐怖体験に巻き込まれていく。10話で構成されたコミックス1冊で完結する漫画作品だが、じめじめとしたJホラー的な作風でラストには衝撃の展開が待っている。

 袈裟丸氏はこの作品の他に、コミックスとして『林宏』が刊行されており、そのほかに『週刊ヤングジャンプ』ほかでいくつかの読切を発表している。同誌の読者、そしてコアなホラーファンに愛される“知る人ぞ知る”袈裟丸周造氏だが、雨穴氏も新著執筆にあたって影響を受けた作品のひとつだという。

ーー過去に読んで本気でゾッとしたホラー漫画を教えてください

「今、思い出すだけで怖くなってしまうんですけど、袈裟丸周造さんという方の『廃屋の住人』という漫画があるんです。亡くなった小さな男の子がクレヨンで描いた自画像が題材になってお話が進行していく物語で、最後にその男の子が描いた絵が物語の終盤にある、ものすごく衝撃的なページとリンクしていて。それはもちろん、面白かったんですけど、自分の中ではトラウマになるほど怖かった漫画です。『絵』を題材にした本の中ではすごく印象に残っています」

ーー今回『変な絵』を書かれるにあたって、その作品から影響を受けたということも?

「はい。この本の2章に子どもの描いた絵がでてきまして。子どもがまっすぐにまだ線が引けないとか、技術が足りないがゆえの乱暴さというか、ぐちゃぐちゃっとしたニュアンスというのが、もちろん可愛らしくてほほえましいと思う反面、すごく不気味だなとか怖いなっていう感じもあって、その点をすごく参考にしました」

『廃屋の住人』は11年前の漫画だが、不気味な「家」や、稚拙な線で描かれた「絵」など、たしかに雨穴作品と通じる箇所がいくつかある。『変な絵』でますます“覆面ホラー作家”の正体が気になったという人は、『廃屋の住人』を手に取ってみてはいかがだろうか。

全ての写真を見る