アニメとはひと味違う…1970年代に連載された漫画版『デビルマン』を読んでみたら“噂以上”に衝撃を受けてしまったの画像
講談社漫画文庫『新装版 デビルマン』第1巻(講談社)

 1970年代に一世を風靡したテレビアニメの『デビルマン』。正義のヒーローが実は“悪魔族”なんて、当時は驚きの設定といえよう。筆者は再放送世代で楽しみに見ていたが、リアルタイムで視聴していた子どもたちも、同じようにテレビの前で『デビルマン』の活躍ぶりに釘付けとなっていたのではないだろうか。

 漫画版は設定自体が異なり、テーマがホラーということもあって、描写が“グロい”とよく噂を耳にしたものだ。そこで筆者も満を持して漫画版を読んでみたのだが、噂以上の衝撃を受けてしまった……。今回は、そんな漫画版『デビルマン』の壮絶さを解説していこう。

■デーモンに乗っ取られた人々の豹変が怖すぎる…

 永井豪氏の『デビルマン』は漫画とアニメがほぼ同時進行しており、そもそも別の設定で進行していたようだ。主人公・不動明とヒロイン・牧村美樹は同じだが、漫画版にはアニメ版に登場しない主要キャラである明の親友・飛鳥了が登場する。

 デーモンが200万年ぶりに復活して人類を滅ぼそうとしていることを父の研究によって知っていた了は、人類を守るために明にデーモンの能力を憑依させて戦うことを提案する。

 この悪魔の力が明に憑依するのは、アニメ版とほぼ同じ設定だ。そして襲い掛かる敵と戦っていくのも結果的に人類を守ることになるので、そこはアニメ版と遜色ない。ただ、漫画版ではデーモンが宣戦布告をし、人類に無差別の憑依を仕掛けてくるのだが、このデーモンに乗っ取られた人類の姿がとにかく怖すぎるのだ……。

■デーモンの犠牲になっていくキャラたちの姿が壮絶に悲しい

 デビルマンの身近な人々は、次々と犠牲になっていく。

 たとえば、明がかつて住んでいた家の隣に住んでいた「サッちゃん」。見た目はどう見ても幼稚園児くらいなのだが、新幹線で会いに来るほど明のことが大好きな少女だ。

 しかし、帰りの新幹線に乗った際、「ジンメン」というカメのような凶悪なデーモンに襲撃され、その毒牙にやられてしまう。しかも「ジンメン」の甲羅には、食べた人間たちの顔が意識を持ったまま浮かび上がっているという衝撃的な設定。当然、サッちゃんもその一人となっている。

 もうこれだけで嫌になるのだが、それだけでは済まない。ジンメンはデビルマンである明の動きを封じるため、甲羅の前面にサッちゃんを浮かび上がらせていた。

 サッちゃんが明に呼びかけるシーンが、なんとも怖くて切ない。暗闇に取り残されてしまったサッちゃんの心境を映し出すかのように、真っ暗な背景に彼女の悲壮な顔だけが描かれており、「あたし死人なの」「あたしのからだをひきさいたの」「もうママといっしょにくらすこともできないの」「まだ生きたかったのに」と訴えるのだ。

 ああ……サッちゃん! まだ幼いのに……。これは堪える。デビルマンとなった明もさすがに動けない。しかし、サッちゃんは強かった。「おにいちゃんこいつを殺してー!」「あたしは死んでる気にしないでー!」「あたしは死人よ!」と、叫ぶのだ。

 意を決したデビルマンはジンメンを攻撃するが、それはつまりサッちゃんも死んでしまうということ。つらすぎる選択であり悲壮感が漂う。本当に少年誌の漫画なのか……と思ってしまったくらいだ。

 また、「ススムくん」も壮絶だ。彼は、明が居候している牧村家の小学生・タレちゃんの友達で母親にいじめられるからと家に帰りたがらない。心配した優しいタレちゃんが家に泊めてあげると言ってあげるが、その帰り道になんと母親と遭遇してしまう。

 タレちゃんは母親にいじめないでと強く頼むが、当の母親は何を言っているのかという困惑ぶりを見せる。父親も早く帰ってくるというし、なにより優しい顔をした母親に安心したススムくんはタレちゃんと別れ、家に帰ることになった。

 しかし、家に着くと母親は急に豹変!「おまえしゃべったね」と背後からニヤつきながら迫ってくるのだ。そのとき、いいタイミングで父親が帰宅。ほっとしたススムくんは泣きながら「ママがいじめるんだ!」と父親に抱きつこうとするも、なんとすでに父親はデーモンになっていたのだ。

 前後から迫ってくる両親に悲鳴を上げるススムくん……。直接襲われる描写はないものの、「その年じょじょに 人間は デーモンに かえられていきつつあった」というナレーションにあわせて、ススムくんの生首が転がっていた……。マジ勘弁だ。

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