ドラマ企画も進行中、最も熱い演劇漫画『ダブル』ふたりの役者の独特な関係の画像
画像は野田彩子『ダブル』コミックス第4巻

 第49回小学館IKKI新人賞「イキマン」受賞でのデビュー後、『わたしの宇宙』や『潜熱』など注目作を生み出す漫画家・野田彩子氏は今年でデビュー10周年。現在は『ふらっとヒーローズ』で演劇漫画『ダブル』を連載中だ。

『ダブル』は昨年発表された第23回文化庁メディア芸術祭マンガ部門の優秀賞受賞作で、世界一の俳優を目指す宝田多家良と鴨島友仁という2人の男の物語。2020年10月に発売されたコミックス3巻の帯では連続ドラマ化の企画が進行していることも明かされており、今後より多くの読者の目に触れるに違いない作品だ。

■ふたりでひとつ、共依存に近い関係

「この世界すべてが一つの舞台 人はみな男も女も役者に過ぎない」

 鴨島友仁と宝田多家良は小さな劇団に7年間所属している役者同士。同じアパートに住む隣同士で2人とも無名な役者だが、友仁は出会ったときから多家良が持つすさまじい才能に気づいていた。

 多家良の天才性に焦がれる一方で、世間の人に多家良を知ってほしいという一心で生活を支えていく友仁。生活能力がほぼゼロに等しい多家良のために、掃除や洗濯、スケジュール管理、稽古中の代役まで、煩わしいことをすべて背負う友仁。「多家良の代役を演じられるのは俺だけだ」と語る友仁も、世界一の役者になる夢を抱いている。

 舞台に立つとまるで別人の顔を見せる多家良。だが、そんな多家良の演技はまた、実は友仁によるものでもあった。多家良は文字でセリフを覚えられないため、いつも友仁が脚本を読み聞かせをしているのだ。役作りや目線の向きまで、舞台での多家良の演技の半分は友仁とともに作り上げてきたものでもあった。

 序盤では2人の関係を親しい友人関係だと思ってしまうかもしれない。しかし、物語が進むにつれ、多家良にとっての友仁のそれ以上の関係性が伝わるはず。共依存にも近い関係だが、次の展開が待っている。これまで友仁とともに自らの演技を作ってきた多家良に、次の一歩を踏み出すための苦渋の決断が迫られるのだ……。

 ふたりでひとつ、光と影の彼らが世界一の俳優を目指す――

■書籍情報
野田彩子『ダブル』(ヒーローズ)
最新刊4巻は5月13日に発売