どうもみなさん、私吉本興業でパンサーというアパレルチームでゴスロリのデザインを主にしている菅良太郎と申します、以後お見知り置きを。
私37歳男子なのですが、少女漫画が好きでこのふたまん+で少女漫画についてのコラムを書かせて頂いている次第でございます。さて、今回紹介させていただく漫画は和山やま先生の『カラオケ行こ!』でございます。和山やま先生はこのマンガがすごい!2021年オンナ編で『女の園の星』で1位、そしてこの『カラオケ行こ!』も5位でダブルでランクイン。昨年は『夢中さ、きみに。』でオンナ編第2位と大常連ですね、本当にすごいです。
今回第1位となった『女の園の星』もめちゃくちゃ面白いんですが、私この『カラオケ行こ!』が大好きなので今回こちらを紹介させていただきたいと思います。
この漫画は少女漫画特有の恋愛要素は一切ございません。むしろほとんど女子が出てきません。とにかく設定がすごいのです。簡単なあらすじはといいますと、主人公の中学生、合唱部部長の聡実はヤクザの狂児にからまれて歌のレッスンを頼まれます。なぜかというと狂児の組の組長は大のカラオケ好き。その組長主催のカラオケ大会で歌下手王になってしまうと組長自らの手によって下手くそな入れ墨を入れられてしまうのです。聡実は、絶対に歌がうまくなりたい狂児に毎週拉致されて、嫌々ながら歌唱指導を行いますが、やがてふたりの間には奇妙な友情が芽生えてきて……?
といった具合でございますよ。設定がもう面白い。
和山先生の漫画ってすごく不思議で、独特の間があるんですね。間? って言われても分からないと思うので私なりに説明させていただきますと、休み時間にワイワイガヤガヤいろんな人たちが各々おしゃべりを楽しんでいたと思いきや、なぜか全グループのお話が同時に終わっていきなりシーンってなる瞬間みたいなのありませんでした? そして「なんか一瞬シーンってなったなぁ」って思いながら、またみんな話し始めるみたいな。逆に分かりづらい?
とにかく絶妙な間があって思わずクスッと笑ってしまうんです。これは読めばしっくりきていただけると思います。主人公の聡実は最初こそカラオケに拉致されて本当に嫌がるのですが、どこか抜けているというかどこか落ち着いているというか。逃げられる瞬間があるのに「今逃げられたなぁ」と思いながら炒飯頼んでしまったり。
ヤクザの狂児はいい意味でヤクザらしくなく、男の私から見てもセクシーでひょうひょうとしているんですね。あまりにもひょうひょうとしているので怖いヤクザの表情が最初見えてこないのですが、車のダッシュボードから小指が出てきてしっかりヤクザなんだなと思わせる演出も素晴らしい。
さて、お話はというと、基本的にはいきなり狂児が聡実の元に現れ拉致され、カラオケでレッスンしていくパートと、聡実自身が最後の合唱大会に向けて練習していくパートに分かれており、これが最後の展開に向けて絶妙に混じり合い、まさかの笑いながら泣ける展開になっていくんですね。ネタバレが嫌なので多くは語れないのですが、マジで絶妙のバランスで成り立っていてしっかり伏線回収していく。むしろ伏線だとすらも気づかせない素晴らしいテクニック。そして迎えたエンディングの後には、どうして狂児というとんでもない名前になったかのエピソードからのすべての元凶、地獄のカラオケ大会はなぜ産まれたか。すべてがつながっていく。
これを一冊にまとめ上げる驚愕の構成力。
また和山先生の絵のタッチが最高。無表情がめちゃくちゃ面白い。ほんの少しのホラーさやレトロさを感じさせる新しさもある、そのうえ妖艶できれい。マジで不思議なタッチなんです。