「たまきの純粋さに、気持ちが洗われる映画にしたかった」

 

たまきは明るい笑顔で周囲を惹き付けるキャラクター。


――主人公の都留たまきは、大学1年で、初めてグライダーの世界を体験する女の子です。ストーリーは彼女がひょんなことから航空部に入部することから始まります。冒頭の演出で大切にされたことは?

 

原作の小沢かな先生も編集者の方も、マイナー競技だけに、かなり苦労されて漫画の第一話を描かれたそうなんですね。映画のほうも、導入として、この子がどういう子なんだろうというところから始まって、彼女がグライダーと出逢い、どのように物語が転がり出すのか、その構成を大切にしました。キャラクターの掴みというか、みんながどういう女の子か気になってくれるようにしようというのがありました。そこから、天真爛漫で、ちょっとドジ、だけど前向きという憎めない部分のディテールを作りました。

 

――彼女のポジティブさに部のみんなが引き寄せられていく姿が素敵ですよね。

 

たまきは暗い過去を背負っているけれど、それに腐らず一生懸命に生きていくんですよね。そして、彼女の明るさにみんなが集まってくる。心に傷のある人がたまきの明るさに浄化されていく物語なんです。なので、本人は意識していませんが、彼女に辛く当たってくるキャラクターも浄化してしまうお話にしたかったんです。 

 

阪南館大学航空部の矢野ちづるは、たまきと異母姉妹。

――とくに、彼女の姉である阪南館大学航空部の矢野ちづるというキャラクターは、たまきに辛く当たる人物の一人です。

 

確かに。そこは、どういう心理で彼女がたまきにここまで当たるのかを、原作より掘り下げて描きたいと思ったんです。彼女たちは姉妹ですが、多分ちづるは、たまきのように感情を素直に出せるようになりたかったのに、それを親に受け入れてもらえなくて…という心理があると考えました。だから、素直なたまきを見ていると感情が高ぶってくる。
そうしたキャラクターの気持ちを一人ひとり大切にしながら、たまきが、過去に縛られて、うまく生きられない人々に、前を向かせていくという裏テーマも出来上がっていきました。

 

たまきとライバルの羽鳥楓。羽鳥の声は河西健吾が演じる。

――たまきと周囲の人々の関係性の変化を描いていかれたんですね。

 

そうですね。たまきが、このお話の時間や空間にどういう足跡を残したのかを描きたかったんです。そういう出逢いがあったことで、この子の人生や、彼女と出会った人たちの人生にどう変化があったのか、ちゃんと描かないといけない作品だと思ったんですよね。同時に劇中以外でも、たまきの持つ素直さ、純粋さに映画を観た人が気持ちが洗われる作品にしたいという願いも込めました。

 

 

第二回に続く!

 

 

<PROFILE>
橘 正紀 Masaki Tachibana
1976年生まれ、アニメーション監督。東映アニメーションで演出助手を務めたのち、09年に『東京マグニチュード8.0』でアニメ初監督。以降、演出、原画、絵コンテなどを多くの作品で手掛ける。近年の監督作に『ばらかもん』(14年)、『プリンセス・プリンシパル』シリーズ(17年〜)などがある。

 

<作品情報>
映画『ブルーサーマル』
2022年3月4日(金)全国公開

監督:橘 正紀
脚本:橘 正紀 高橋ナツコ
声の出演:堀田真由 島﨑信長 榎木淳弥 小松未可子 小野大輔 白石晴香 大地 葉 村瀬 歩 古川 慎 高橋李依 八代 拓 河西健吾 寺田 農
原作:小沢かな『ブルーサーマル ―青凪大学体育会航空部―』(新潮社バンチコミックス)
主題歌:「Blue Thermal」SHE’S(ユニバーサル ミュージック)
挿入歌:「Beautiful Bird」SHE’S(ユニバーサル ミュージック)
アニメーション制作:テレコム・アニメーションフィルム
配給:東映

STORY
高校時代、バレーボール一筋で頑張ってきた都留たまき。
サークル活動や恋愛などで充実した、“普通の大学生活”に憧れ長崎から上京するも、入学早々とある事故でグライダーを傷つけてしまう。その弁償のために“体育会航空部”の雑用係をすることに。
思い描いていた大学生活とはかけ離れた環境に不満を抱いていたが…、主将である倉持の操縦するグライダーで初めて《空》へ飛び立った瞬間から、一面に広がるその美しさに魅了されていく。
「もっとたくさん飛びたい!」とだんだん《空》の世界に夢中になっていくたまき。
彼女の天真爛漫な性格は周りを明るく照らし、気づけば、共に練習に励む先輩の空知や同期との間にも固い絆が生まれていくのであった。 そこには、確かに彼女の求める“充実した大学生活”が存在していた。
ところが、他校との合同合宿で仲たがいしていた姉・ちづると再会する。
時を経ても冷たい態度の姉に《空》の世界にいることを否定され、下を向いてしまうたまき。
更に、初めての大舞台・新人戦では強力なライバルも現れ、 周囲からのプレッシャーに動揺を隠せない。
「自分らしく飛んで来い」
倉持の言葉で上を向くことができたたまきは、 様々な人の想いを乗せて、大空での戦いに挑む。
果たして、《空》に恋した彼女は“幸せになれる風=ブルーサーマル”を捕まえることはできるのか。


公式HP
https://blue-thermal.jp/
公式Twitter
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公式Instagram
https://www.instagram.com/eigabluethermal/

© 2022「ブルーサーマル」製作委員会

 
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