VTuberユプシロン「漫画が大好き!」『ONE PIECE』から学んだ、“餅は餅屋”の創作観【インタビュー後編】の画像
アニメ『でんでんの電脳電車』(C)でんでんの電脳電車製作委員会
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 2023年4月にスタートしたアニメ『でんでんの電脳電車』(CBCテレビ)がいま注目を集めている。大きな特徴は、VTuber(バーチャルYouTuber)が「本人役」で出演していること。不思議な電車を舞台に、VTuberたちによるボケとツッコミの応酬が繰り広げられる、まるでドラマのような作りの一風変わった3Dアニメに仕上がっている。

 その出演者の1人であると同時に、主題歌の作詞作曲も務めているのが、VSingerのユプシロンさんだ。自身の感情を歌詞にのせて歌う一方で、VTuberとしてデビューする前のティザームービーではヘッセの『デミアン』の一節を引用するなど、普段から言葉や世界観を大切にしていることが垣間見えるユプシロンさん。その創作観の原点はどこにあるのだろうか。インタビューでその“素顔”に迫った——。(全2回中の2)

「小中学生の頃から文章を書くのが好きで、自分の好きなアーティストがボエムを書いていると言うので真似てみたり、星新一のショートショートを読んで“エヌ氏”のこととかを書いたりしていました(笑)。
 読むのも好きですが、分厚い小説を読むのは苦手で、どちらかと言えばショートショートや短編小説のほうが好みですね。漫画は長編でも読めるので、それこそ『ONE PIECE』は大好きで何度も読んでいます」

 幼少期からマルチな才能の片鱗をのぞかせていた。

「小学生時代にやっていたこととしては、ピアノと油絵と……あと、小説をちょっと書いたりするくらいですかね」

 今もミュージックビデオの絵コンテを自分で描くこともあるそうだ。

「昔から、家に引きこもって、机に向かって手を動かすのが好きなんですよ。超インドアです。学校もなるべく早く帰りたかったですもん。友達と遊んでいても、集中力が切れるともう『早く帰りたい!』ってなるくらい(笑)。でも好きな創作については集中力が長続きするタイプで、気づいたら何時間も経ってた、なんてことも結構あります」

 ユプシロンさんの『ONE PIECE』好きはファンのあいだで有名だが、子供の頃はどのような漫画を読んでいたのだろうか。平成のメジャーな漫画が挙がるかと思いきや、思わぬタイトルも飛び出してきて驚かされた。

「漫画はすごく大好きで、実家に5000冊くらいあります。親も好きなんですよ。家族はみんな漫画が好きで、物心がついたときから漫画屋敷でした。高橋留美子先生や浦沢直樹先生の作品は全部ある、というくらいの。ちばてつや先生の『おれは鉄兵』とかもありました(笑)」

 最近の漫画では『信長のシェフ』がお気に入りで、「学びのある作品」なのだとか。

「僕の人格形成にめちゃくちゃ深く関わっている作品だと、『ONE PIECE』と『鋼の錬金術師』ですね。ルフィの細かいことは気にしない性格とか、他力本願なところとか(笑)。ルフィが航海術などを周りに任せているように、自分も『アレンジはできないから他の人に頼もう』とか考えてお願いしている感じです。“餅は餅屋”ですね。でも一方では、『作詞作曲だけは絶対にちゃんとやる』とか『歌はしっかり歌う』っていう、ルフィで言えば、『敵にはオレが勝つ!』みたいな感じですかね(笑)」

 漫画について語り始めると、止まらない。大好きな作品の存在は、やはり自身の創作活動にも少なからず影響を与えているのだろうか。にわかに饒舌になったユプシロンさんに問いかけてみると。話題作のタイトルが立て続けに挙がった。

「最近だと、SODA KITの『コンテンダー』という曲は、年末に映画館で観た『SLAM DUNK』に影響を受けています。自分たちはリングの上に立つ“挑戦者”(contender)である』という意味でも歌詞を書いたのですが、一度は崩れたミッチーが――三井寿(みついひさし)が、『ここで戦わなかったらどうするんだ』みたいな感じで、ヘロヘロになりながらも立ち上がってスリーポイントシュートを打つ。そういった部分にめっちゃ影響を受けて書いた曲です(笑)」

 もちろん、大好きな『ONE PIECE』からも少なからず影響を受けているそうだ。

「SODA KITを立ち上げたときに『ONE PIECE FILM RED』が上映中で、3回も映画館に足を運びました。めっちゃ胸がアツくなって、考察動画を見まくった結果、SODA KITの動画にも伏線回収のような要素を散りばめていました(笑)。SODA KITの顔出し前の自己紹介動画ですでに『コンテンダー』や『DRAMA』のイントロを使ったり、さりげなくMVの中にロゴを入れてみたり。それに気づいたファンの子は喜んでくれていましたね」

■アニメ『でんでんの電脳電車』では演技に脚本、主題歌にも挑戦!

 2023年4月にスタートした3Dショートアニメ『でんでんの電脳電車』。ユプシロンさんをはじめとするSODA KITのメンバーがそれぞれ「本人役」で登場し、ユプシロンさんの名前が「原案」としてクレジットされている本作も、ある意味では溢れんばかりの“漫画愛”から始まった企画だった。

「僕がミーティングの席で、『SODA KITでショートアニメを作りたい』とポロッとお話したんです。最初は、YouTubeでアニメを作って配信できたらと思っていたのですが、『CBCテレビさんでやろう』という話になり、地上波での放送が決定して、製作委員会が立ち上がり――と、どんどん話が大きくなっていった感じです(笑)」

 サクッと見られるテンポの良さと、クスッと笑えるギャグが魅力の本作。打てば響くように放たれる会話のキャッチボールが魅力のショートアニメだが、本編にはユプシロンさんの実体験が盛り込まれているそうだ。さらに放送後半のエピソードでは、ユプシロンさんが脚本を担当した回もあるらしいので、ファンの方は要チェックだ。

「1話で出てきたポケベルの語呂合わせは監督が結構考えてくれたのですが……パスワードのくだりは僕の案ですね。あれが本当に僕のパスワードです(笑)。あとは『バイトの面接に受からない』『漢字が読めない』といった回が今後あるのですが、それらも僕の実体験がベースになっています。僕のリスナーの子は、『あれ? これ、実話じゃない?』って感じるかもしれません(笑)」

 ユプシロンさんが主題歌を担当している点も外せない。同じく「本人役」として出演しているバーチャルアーティスト・獅子神レオナさんが歌うオープニングテーマ「Den of Daylight」の作詞作曲に加えて、エンディングテーマ「ドーン!」は自ら歌唱も担当している。本編では「いきなり侍になる」などのはっちゃけぶりが見られる一方、本来の活動の主軸である「音楽」についても新たな表現の挑戦があったのだそうだ。

「初めてアニメのタイアップ曲を制作をしたのですが、オープニングテーマに関しては、アニメと監督、そしてレオナさんの意図をすべて盛り込む必要がありました。作品のテーマが決まっているので、電車と関係のあるワードを意識して入れるようにしたり。逆に、エンディングテーマは好きに作らせてもらっています。オープニングと似すぎず離れすぎず、くらいの雰囲気にしたくて、元気で明るいオープニングに対して、『元気でちょっと格好いい曲』というイメージで作りました」

 アニメ本編の収録に関しても、「めちゃくちゃ大変でした」と話していたユプシロンさん。実際に体を動かしながら演技する、アニメというよりは「ドラマ」に近い形で撮影が行われたため、収録は想像以上にハードだったらしい。出演者の多くが演技の経験にも乏しかったため、スタジオでの収録は丸一日かけて実施された日もあったのだそうだ。

 アニメ『でんでんの電脳電車』は、CBCテレビにて毎週水曜日の深夜1時35分から放送中。TVerやAmazonプライム・ビデオなど各種配信サイトでも見ることができるので、ぜひチェックしてみてほしい。

Twitter:https://twitter.com/yupsilon_
YouTube:https://www.youtube.com/c/Yupsilon
SODA KIT:https://www.youtube.com/@SODAKIT_oO
 
<ライブ情報>
◆SODA KIT バーチャル配信ライブ
日時:2023年7月1日(土)OPEN 19:30 / START 20:00
配信チケット:5,500円(税込)
プレイガイド:ZAIKO
販売スケジュール:後日発表
※当日SODA KIT公式YouTubeチャンネルにて冒頭無料公開を予定
 
◆バズリズム LIVE V 2023
日時:2023年7月29日(土)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:ONLINE(SPWN / ニコニコ生放送 / Moment House)・LIVE VIEWING(池袋HUMAXシネマズ)
出演アーティスト(50音順):<VTuber>ヰ世界情緒/大空スバル/カルロ・ピノ/SODA KIT/電脳少女シロ/ 七海うらら/星街すいせい/Mori Calliope/ヤマト イオリ/理芽・<SPECIAL GUEST>Creepy Nuts/フジファブリック
出演者:MC:バカリズム/進行:市來玲奈(日本テレビアナウンサー)
チケット:
オンライン視聴「スタンダードチケット」:¥8,800(税込)
オンライン視聴「プレミアムチケット」:¥19,800(税込)
オンライン視聴「推し活応援チケット」:¥19,800(税込)
ライブビューイングチケット:¥9,800(税込)
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